かつて昭和名球会という呼称で発足した日本プロ野球名球会は、2000本安打、200勝、250セーブを条件として会員を集めてきた。もともとは亡くなられた金田正一さんが昭和生まれのプロ野球選手を対象として、発足させた団体だ。その後、元号が平成に変わったことにより、日本プロ野球名球会として法人格を持った団体として存在している。
1978年の発足時は18名の任意団体で、“社会の恵まれない人達への還元とプロ野球の底辺拡大に寄与する。”という目的を持った法人となっている。
昭和生まれを対象としていたので、川上哲治さんなどは会員ではなかったのですね。
投手会員の少なさ
現在は投手16人、野手48人が会員となっている。これだけを見ても200勝投手になることの難しさが理解できる。更に現役の投手について現状を確認すると、田中将大投手が日米通算で181勝と迫っているが、2位の石川雅規投手は42歳で苦しくなってきている。山本昌さんや工藤公康さんなど左投手に現役を長く続けた投手が多いので、石川投手は微妙なラインだろう。現状ではダルビッシュ投手や前田健太投手の可能性が高いと思われるが、投手は故障がつきもので、予断は許さない状況だ。
通算勝利数 |
年齢(2022/2現在) |
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田中将大 | 181 | 33 |
石川雅規 | 177 | 42 |
ダルビッシュ有 | 172 | 35 |
前田健太 | 156 | 33 |
涌井秀章 | 150 | 35 |
和田毅 | 148 | 40 |
岸孝之 | 141 | 37 |
内海哲也 | 135 | 39 |
金子弌大 | 129 | 38 |
菅野智之 | 107 | 32 |
なぜ200勝が難しいのかその理由
その原因に投手の故障の多さがあるが、もう一つが勝利を上げることの難しさが上げられる。250セーブの規定が2003年12月に新たに設けられたが、200勝の規定は変わりがない。勝利数を上げるためには先発ローテーションを守ることが大切であり、中継ぎや抑えでは安定的に勝利数を重ねることは難しい。打者の場合はDHや代打などで晩年に安打数を稼ぐことが出来る。しかし晩年に力の衰えた投手には、勝利を上げるケースで登板できることは極めて難しい。セーブについても力が衰えればストッパーを任されること無くなり、同じことが言えるようになるかもしれない。この事から見ても投手の200勝250セーブは打者の2000安打よりも難易度が高いということが出来る。
名球会員の価値がある槙原寛己さん
パーフェクトを最後に達成した投手として有名な槙原さんだが、通算勝利数は159勝だ。三本柱と言われた斎藤雅樹さんは180勝、桑田真澄さんは173勝であり槙原さんは評価が低く見られがちだ。守備力やバッテングでもその才能を見せていた斎藤さん桑田さんより、槙原さんは見劣りがする傾向に有るが、槙原さんは56セーブを上げている。56を200/250で名球会の規定で勝利に換算すると、44.8となり203.8勝と200勝を超える。斎藤さんは11セーブ、桑田さんは14セーブでこの計算では200を超えない。ポジションを変えながら安打数を重ねる事ができる打者以上に、先発と抑えというチームでも大切なポジションで数字を重ねた槇原さんの記録はもっと評価されて良いものだと思う。
菅野智之投手の場合
実働9年で215登板している菅野投手は、先発が213試合という極めて大切に使われている投手だ。MLBへの移籍が難しい状況下であるため、通算の勝利数は日本で安定的に伸びていくことが考えられるが、後93勝はかなり難しい数字だろう。菅野投手の場合は大きな故障や手術歴がなく、ここまでは順調な成績を収めてきているが、これからは故障との付き合いも難しくなっていくだろう。まだまだ老け込む歳ではないが、本拠地が投手に不利な東京ドームということも考えると、今までのような圧倒的な成績を収めることは難しいだろう。
巨人での200勝
実は生え抜きで200勝を上げたのは、堀内恒夫さんしかいない。
常に常勝目指す巨人で、ローテーションを守ることは難しい。力が少しでも衰えればローテーションを外されてしまう。堀内さんの場合は最初の13年で194勝を上げてしまっている。
後楽園、東京ドームと狭い球場も投手には不利で、巨人で200勝投手が現れないのも納得がいく。
槇原・斎藤・桑田の三本柱が誰一人達成できなかったのが不思議に見えるが、巨人の特殊事情が関係していると見るのは考えすぎだろうか。
菅野投手の場合も今の力を維持できなければ、ローテーションを守ることが難しくなるだろう。
かつて江川卓さんは、13勝を挙げた年に引退している。
ライバルの西本聖さんは晩年ローテーションを外され中日にトレードで出された。その中日で20勝、11勝と意地を見せたのも素晴らしかったが、力が少しでも落ちたと見るや放出した巨人の姿勢も徹底している。
菅野投手は力が衰えた後に、日本の他球団に移籍することはまずないだろう。巨人で先発する力がなくなれば、引退せざるを得ない状況になるかもしれない。