政策保有株の持ち合い解消で日本の株式市場が変わる 経営陣に責任

損害保険会社の政策保有株の売却に端を発して、各社で持ち合い株の解消が進んでいます。損害保険会社だけに限らず銀行などの金融機関、自動車会社の系列による持ち合いの解消など、大きく株式市場が変わろうとしています。

政策保有株の持つ意味

損保会社による政策株の保有で、競争原理が働かなかったという見方が一般的ですが、実際のところは、損害保険会社としては、手放したかった株が多かったのではないかと思います。保険会社の主な利益の源泉は、保険ではなく、資産運用による運用益です。保険で儲かるかといえば、主力の自動車保険は赤字すれすれの成績です。

よく事故が少なくなったのだから、保険料が下がらないのはおかしいという考えが提示されますが、自動車の価格はとてつもなく上がっています。特に昭和の頃は、バンパーの破損が板金や中古の部品などで直されて、安く済んでいたのですが、今はバンパー付近には各種センサーやカメラなどが装備されていて、修理代が跳ね上がります。車両本体も価格が上がり、修理の工賃も上がっていることから、自動車保険は赤字が続いていると考えられます。

また、昭和の頃は米櫃とされていた火災保険も赤字が続いています。

損害保険は赤字が続かなければ保険料を上げることが許されない業種なので、そのあたりは厳しく見られていると言っていいでしょう。もっといえば体力以上に保険料を安くすることも、契約者保護の観点から監督官庁からは許されないはずです。

保険自体では大きな収益が得られないので、損害保険会社は資産運用を効率的に行う必要があります。これはアメリカなどでも同様で、大手保険会社でも保険自体では赤字すれすれで、資産運用で収益を出すことが必要になっています。(そのためアメリカでは無理な運用をして、最大手のAIGが潰れかかったことがあります。)

政策保有株は十分な配当を出してくれれば良いのですが、中には何年も無配という会社もあります。しかし、損害保険会社は売ることが難しい状態になります。JALや三光汽船などが倒産したときも、最後まで保有していたのは損害保険会社だったと記憶しています。(当時の新聞に出ていたはずです。)

これほどの大型株ではなくても、純投資としては効率が悪い株を政策株として保険会社は持ち続けなければなりませんでした。

これから損害保険会社は純投資以外の政策株を売却するようですが、配当をきちんと出して純投資で持てるような会社は、売却に応じてくれると思います。しかし、何年も無配で株価も一向に上がらないような会社は、大口の金融機関の売却は大きな影響があると言っていいでしょう。急に売ってしまうと経営に大きな影響が出るので、交渉しながら売却するのでは無いかと思います。金融機関にはあまり相場に大きく影響しないような売却が求められると思います。

経営に厳しい目が注がれる環境

持ち合いなどの解消により、物言わぬ株主が減って、経営者はゆるい経営ができなくなると言っていいでしょう。毎年同じような政策を打ち出す経営陣は、無能のレッテルを貼られて交代を余儀なくされるところが増えてくると思います。今までは前任の経営陣のフォローをすることが大半の日本の企業の常でしたが、番頭タイプのリスクを取れない経営者は退場していくことになると思います。

今までは儲かっても内部留保するような日本企業が多かったのですが、それでは株主が許してくれないでしょう。株主還元や未来に対する投資ができない経営者は、無能の烙印を押されてしまうことが出てくるのではと予想しています。

日本の株式市場には良い影響

結果的に資本利益率などが良くなれば、日本の株式市場は成長するのではないかと推測します。問題は金融機関の株式売却により、経営に重大なインパクトがある場合でしょう。大型の企業ではあまりないことかもしれませんが、ファンドなどによる株主提案は、今より大きな影響力を持つようになるかもしれません。実際のところ、安穏とした経営をしてきたところほど、狙われることは間違いないでしょう。系列の企業などに安定株主となってもらっているところは、株主対策をしなければならなくなると推測します。逆に言えばやっと日本の企業においても、株主が大切にされるようになるということでしょう。

実際のところ急に配当を増やし始めた企業や自社株買いを始めた企業が続出しているのは、今までやれることをやっていなかった証左にもなっていると思います。

企業が成長するための努力を始めれば、日本の技術と従業員には競争力があります。これからは経営陣の能力によって、実績に差がつく時代になったとも言い換えることができると思います。

株主もいっそうの眼力が必要になるかもしれません。日本には優秀なインデックスファンドが少ないので、個別株投資が注目されています。しかし、これからはパッシブのインデックスファンドでも、安定した成績を残せるような市場に、日本はなっていくかもしれません。やっと資本主義のメカニズムが動き出すのではないかと、期待しています。

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