佐々木朗希投手がポスティングによるMLBへの移籍を、ロッテ球団から承諾を取り付けたと報道されています。これには賛否両論あるようですが、私は個人的に佐々木朗希投手を責める気にはなれません。
佐々木朗希投手の気持ち
入団時にどんな密約があったのかは外部からはわかりませんが、佐々木投手はまだ23歳で実働4年の投手です。こんな投手に無制限にポスティングを許してしまえば、NPBの存続に関わる問題です。しかし、ロッテ球団の責任はひとまず置いておいて、佐々木投手の気持ちを考えれば、これだけのことを言える過去のいきさつが佐々木投手とロッテ球団との間にあったことは、想像に難くありません。入団当時よりメジャー志向を打ち出しており、入団時にどんなサイドレターがあったのか明らかにされていませんが、なんらかの約束がなければ、ここまで佐々木投手が主張するはずもなく、ロッテが承諾することもないでしょう。
こうなると佐々木投手を一方的に悪者にする論調には、全面的に賛同する気にはなれません。佐々木投手とすれば、むしろ入団時からのある種の約束を、球団に配慮して明らかにしていないことがせめてものロッテに対する感謝の気持なのかもしれません。もし密約があり、それが明らかになってしまえば、ロッテ球団の選手獲得姿勢に問題が残ってしまいます。
昨年のオフにも契約更改に時間がかかってしまった事を考えると、むしろ佐々木投手は1年間、当初の約束よりも、我慢してきた可能性さえあると考えてしまいます。
いずれにしろ佐々木投手がロッテ球団との入団時からの交渉の中で、今回の承諾を取り付けたのは、佐々木投手の努力であり、決して責められるべきものではないでしょう。
逆に言えばパ・リーグのソフトバンクと楽天を除く球団がドラフトで指名をしたことは、佐々木投手の出した条件を飲んだ球団だったと考えて良いのかとまで想像してしまいます。
観客動員に不安のあるパ・リーグの球団が、条件を飲んでも集客やグッズの売上で、ペイできると考えた可能性をひていできません。
ロッテ球団の責任
こちらはかなり問題があると思います。
入団時のサイドレターの存在などは明らかにされていませんが、ファンに対する説明責任は免れないと思います。これからロッテ球団に入る新人は、同じような条件を求めてくる場合も十分に考えられます。もし仮に入団4年でポスティングを認めるサイドレターが獲得可能となるならば、大学卒の即戦力でも26歳ぐらいのちょうどいい時期にMLBへの移籍が可能となります。しかも佐々木投手は通算29勝でタイトルも取れず、プロでの優勝経験もないとなると、MLBのポスティングで移籍できる実力があるならば、実質的にはほぼ無条件で移籍できる事となってしまいます。こんな条件をドラフト1巡の即戦力投手が次々に求めてきたら、ロッテ球団はどうするつもりでいるのでしょうか?
他の球団への波及
入団時にもし仮に佐々木投手が入団4年でのポスティングを求めていたとすれば、ドラフトで指名した他の3球団も、この条件を飲むつもりであったと考えて良いかもしれません。そうなると2019年のドラフト時に既にこの問題をパ・リーグの4球団は、認めていたということとも考えられます。この状況ではこれからの新人で目玉級の選手は、4年でのポスティングを求めることが普通になってしまうかもしれず、この問題を放置してきたNPBは非常に問題がある組織と推測できます。
これは遡れば大谷翔平選手のドラフト時から引きずってきた問題で、明確な対応をしてこなかったNPBの問題ということができるでしょう。
MLBのマイナー化を受け入れたのか
今回のロッテ球団は優勝を重ねているわけでもなく、佐々木投手は来年優勝を目指す中で、絶対に必要な戦力でしょう。しかし、この一連の状況は、ロッテ球団が優勝を第一の目的としていないことの裏付けと取られかねません。
もしこの姿勢がドラフト指名時の3球団にもあったとすれば、パ・リーグはメジャーの育成機関であるマイナーリーグとなることを部分的に認めてしまったことになります。
ソフトバンクとの力の差
そうであるとすれば、世界一の球団を目指しているソフトバンクとは、志の段階で天と地ほどの差があることになってしまいます。今年13.5ゲームの差がついたのも頷ける結果と言えます。
ソフトバンクの衰え
そしてさらにいえば、ソフトバンクがDeNAに日本シリーズで負けたのは、弱いチームとしか戦ってこなかった副作用が出てしまったのかもしれません。いくらソフトバンクが上を目指しても、戦うチームが弱ければ弱体化してしまいます。パ・リーグ自体のレベルが落ちてしまえば、戦力を維持するのは非常に難しいと言わざるを得ません。パ・リーグを圧倒したソフトバンクの予想外の惨敗は、パ・リーグの他球団の姿勢から派生しているのかもしれません。ソフトバンク1チームだけが強くなっても、リーグのレベルが落ちてしまえば、世界一の球団なんて絵に描いた餅以外の何物でもないでしょう。
日本という国にリーダーがいない現実
何事も大事になるまで動きが遅いのは、日本という国の特徴かもしれません。問題があっても大きな問題や犠牲者が出るまで、根本的な問題に対処しないまま棚上げにする傾向は、NPBだけにあるものではありません。今回の問題も見方によっては佐々木投手が犠牲者になりかねない状況です。果たしてこういう時にリーダーシップを発揮できるのは、どんな組織や人物なのでしょう。