昭和の時代では球界の盟主として人気実力ともに、12球団のトップだったジャイアンツですが、2022年観客動員数では阪神タイガースの後塵を拝しています。最後に日本シリーズで優勝したのは2012年で、10年も日本一になっていません。これは過去2回あった8年を大きく超えるもので、昨年はBクラスと現在のジャイアンツは、結果だけを見れば、球団史上最弱と言っていい戦績だといえます。こうした状況下でジャイアンツは、数々の球団強化策を近年になって打ち出しています。その効果が現れるかが注目されますが、その中で一つジャイアンツが長期的視線にたって、強化戦略を始めていると感じる事があります。
ポルテベースボールスクール」の無料体験会へ参加圧倒的な人気に陰り
プロ野球の中で圧倒的な人気を誇っていたジャイアンツですが、令和の現在はその地位にはありません。かつては1試合数千人がせいぜいだったパ・リーグの観客動員も、最下位の西武でさえ16,000人を超えており、差は劇的に縮まっています。
順位 | チーム | 試合数 | 観客動員数累計 | 平均動員数 |
1 | 阪神 | 72 | 2,618,626 | 36,370 |
2 | 巨人 | 72 | 2,318,302 | 32,199 |
3 | ソフトバンク | 72 | 2,247,898 | 31,221 |
4 | 広島 | 71 | 1,968,991 | 27,732 |
5 | 中日 | 71 | 1,807,619 | 25,459 |
6 | DeNA | 72 | 1,778,980 | 24,708 |
7 | ヤクルト | 71 | 1,614,645 | 22,741 |
8 | ロッテ | 71 | 1,468,622 | 20,685 |
9 | オリックス | 71 | 1,412,638 | 19,896 |
10 | 楽天 | 71 | 1,331,131 | 18,748 |
11 | 日本ハム | 72 | 1,291,495 | 17,937 |
12 | 西武 | 72 | 1,212,233 | 16,837 |
東京という巨大マーケットを有しているジャイアンツですが、かつて程そのメリットを活かしきれておらず、相対的な人気に陰りが見えていることは数字を見ても明白です。
人気低下が球団弱体化に直結
かつて人気球団、金満球団とさえ揶揄されたジャイアンツですが、そのアドバンテージを活かして戦力強化ができる状況ではなくなってきました。人気の低下はFAとドラフトにも影響しているようです。
FA補強の不発
ジャイアンツの戦力強化の一端を担ってきたFAですが、最近は不発に終わる事が増えて、かえって球団強化の足枷になってしまっています。原因としては主に下記の3点があると思います。
超目玉選手のメジャー挑戦
最近の超一流選手はポスティングによりメジャー挑戦することが多く、FA市場に出てくる前に渡米してしまうことが多くなりました。したがってFA市場に出てくる選手は、ワンランク下がった選手が多く、絶対に活躍が約束された選手ではなくなりました。
絶対的な自信のないFA選手
超一流選手ではない選手は、厳しい競争や環境を敬遠することが多く、競争が厳しいと言われるジャイアンツは、そういった選手からは敬遠される傾向にあります。
過去の失敗による選手のダブつき
FAを取る際には道義的な問題や色々な付帯条件もあるのか、なかなか成績の出ない選手を整理できないようになってしまいます。近年FAで獲得した選手はなかなか成績が出ずに、戦力強化としては機能していない場合が多く、金銭的にもその負担は小さくありません。また、引退後の進路についても球団は面倒を見ていることが多く、そのポストにも限りがあるというのが現実です。
ドラフトでの優位性の逸失
かつては逆指名制度があり、ソフトバンクとともに戦力強化を十分に行えていましたが、現在は逆指名制度自体がなくなりました。しかし、その後もジャイアンツは東京という地の利や、ジャイアンツ自体の人気もあってアマチュア選手からは人気のある球団でした。しかし冒頭に言及した様に、ジャイアンツの人気は相対的に低下しており、アマチュア選手が入団を熱望するようなケースは極端に少なくなっています。以前はジャイアンツ以外は指名を遠慮するよう訴える選手がいましたが、最近では殆ど見なくなりました。以前はドラフト下位でも囲い込みのように有望選手を指名できていたジャイアンツですが、そういったケースも減ってきているのではと推測されます。
人気復活のための巨人軍の新戦略
以前は地上波ではジャイアンツ戦しか放送しない地域が多かったのですが、最近は地上波では殆ど野球中継を見なくなりました。昭和のジャイアンツ人気は、日本テレビ系列を中心とした地上波による露出で人気を保ってきたと思います。しかし最近は地上波による試合中継は激減しています。また、読売系列を中心とした新聞も部数を大きく減らしており、ジャイアンツ人気を支えられなくなっていると推測できます。 一般社団法人日本新聞協会の発表
そんな中で日本テレビや報知新聞を中心として、新たなジャイアンツの露出戦略が展開されているようです。
内容が秀逸な報知プロ野球チャンネルの動画配信
具体的にはYou Tubeを利用した露出が、非常に多くなっています。また、マスコミ球団であるだけにその動画の質は素晴らしく、ファンにとってはたまらない内容になっています。更に言えば、系列の解説者を交えた解説動画はとても中身が充実しており、ファンの期待に応えられるものになっています。地上波では決して実現することの出来ない長尺の動画などでは、今まで得ることのできないような内容のものが多く、コアなファン層が興味をそそられると思います。 報知プロ野球チャンネル
圧巻だった水野スカウト部長の出演
報知プロ野球チャンネルの動画では水野スカウト部長が8回にわたって出演して、昨年のドラフトの内情を紹介してくれました。この動画はジャイアンツのコアなファンだけではなく、ドラフトファンにとっても興味津々の内容で、多くの野球ファンに刺さったのではないでしょうか。
マスコミ球団特有の取材力
その他の動画では、今年の新人のアマチュア時代の指導者などにも取材をしており、マスコミ球団であることの強みを十分に活かした内容で、無料で見られることに驚きです。今までは有料ということに拘りがあったと思いますが、マスコミを取り巻く環境は劇的に変化しており、報知新聞や日本テレビもビジネスモデルを変えてきているのではないかと推測されます。
露出が多くなればファンが増える
応援していない選手であっても、苦しい練習に耐える姿や、オフでの姿や努力を見ると、自然と応援したくなる気持ちが湧いてきます。これはファンでない人や、他球団のファンでも同じではないでしょうか。ジャイアンツが人気復活のために、球団を挙げて動画配信などに協力しているのは、配信内容からも明白です。今後もますます期待できるのではないでしょうか。