2025年のジャイアンツはこのオフ久々に、大型補強を敢行しました。これだけ補強したのは久しぶりですが、その殆どが戦力の重複を引き起こしています。この補強には疑問視する意見もあるようですが、阿部監督の狙いは単なる戦力補強ではないと推察します。
ライデル・マルティネス投手の補強の意味
リーグでもトップクラス、侍JAPANでもクローザーを務める大勢投手がいるにも関わらず、リーグNO1のライデル・マルティネス投手を獲得しました。どちらがクローザーを務めるかで、ファンの間では論争があり、戦力の重複のように見えますが、私はこの補強は必要だと思います。
リーグ連覇するためには、大型連勝が必要になります。ここで問題になるのが、連勝が続いた場合のクローザーの連投問題です。阿部監督はマシンガン継投などの経験を踏まえたうえで、昨シーズンは終盤まで3連投をリリーフ陣に命じませんでした。これはかなり厳しく守られ、リリーフ陣の故障や疲労によるパフォーマンスの低下を防ぐ結果になっています。昨年リーグ優勝したにも関わらず、今年のキャンプで故障を訴えるリリーフ投手がいないことが証左だと思います。
しかし、昨シーズンのように僅差の優勝ではなく、圧倒的な強さを求めるのであれば、故障の心配が尽きない大勢投手一人では、心もとないというのが本当のところだと思います。大型連勝をクローザーの不在により逃すことのないように、少し贅沢な気もしますが、クローザーを2枚備えたのは、昨年の経験があったからに他なりません。
大勢投手にとってはクローザーからの配置換えが悔しいかもしれませんが、故障のリスクから解放され、長期的に見た場合のパフォーマンスを考えれば、結果はいい方向に行くと予想します。
甲斐拓也捕手獲得の狙い
甲斐捕手は間違いなくNPBトップレベルの捕手です。ジャイアンツに素晴らしいキャッチャーがいますが、甲斐捕手のレベルまでとは言い切れず、事実昨年は3人が併用されました。3人併用大勢で優勝したのであれば、それを継続すればいいと考える向きもあるとは思いますが、現場の責任者である阿部監督は現状維持を望みませんでした。何故でしょうか?
仲良しクラブはいらない
ジャイアンツの選手はとにかく仲が良く、雰囲気は最高だと思います。FAで来た選手に対しても暖かく迎える土壌があり、素晴らしいチームだと思います。また、引退後も面倒見がよく、他チームに出ていった選手にでさえ、引退後にポジションを与えることもあります。しかし、その事が生え抜き選手に気の緩みを与えてしまっていることが、あるかもしれません。捕手が3人で併用となれば、バチバチの競争が予想されますが、ジャイアンツの捕手陣は良い人が多く、ポジションを争っている感じがしません。
捕手だけでなくほかのポジションも、おっとりとした選手が多く、争いが激化しているといった雰囲気が感じられません。このあたりに、阿部監督は満足できないのではないでしょうか?プロであればレギュラーポジションは一つであり、競争相手との関係が良好というのは、首脳陣からしたら物足りなく映ってしまうでしょう。サラリーマン社会でも偉くなれば競争は激化します。むしろジャイアンツより陰湿な競争が、サラリーマン社会にはあると言っていいでしょう。
短期決戦に弱いのはのんびり型が多いから
ジャイアンツの野手陣は、のんびりした性格の選手が多いように見えます。何が何でもという雰囲気がある選手は、まず見当たりません。何となく大人のチームという感じがしますが、その反面で短期決戦に弱い傾向にあると思います。先に手を出させてから打ち勝つというのはペナントレースのような長丁場では時間が足りますが、短期決戦では間に合いません。短期決戦では最初からつっかけていくぐらいでないと、反撃する前に終わってしまいます。また、エンジンがかかるのが遅ければ、精神的に追い込まれます。日本シリーズでの8連敗や昨シーズンのCSでの敗退は、何処かのんびりした感がある野手陣が、構え負けしてしまっているようにも見えます。
2000年代の強かった頃のジャイアンツの野手は、のんびりした選手もいましたが、そういった選手は松井選手のように精神的に強かったイメージがあります。仁志敏久選手や清水選手は攻撃的で勝負が早く、清原和博選手に至っては、戦う前から圧倒する姿勢でした。
あの頃の打線と比べると、迫力不足は否めません。それは長打力という意味だけではなく、相手チームを飲み込むような雰囲気には遠く、どちらかというと良い人と思われてしまっているかもしれません。
別に喧嘩をふっかける必要はありませんが、打線の中に闘志むき出しの選手が一人二人、できれば1,2番に置きたいというのが、理想でしょう。
甲斐捕手は短期決戦の勝ち方も知っているであろうし、8連敗の時の司令塔で、工藤公康監督の短期決戦の準備を最もよく知っている選手です。
阿部監督が最も欲しいのは、甲斐捕手のリーダーシップと頭の中だと思います。