遂にというか、とうとうというか、松原聖弥選手がトレードで移籍となりました。相手は貧打にあえぐ西武ライオンズということで、即スタメンも有り得るので、松原選手にとっては最大のチャンスといえるかもしれません。しかしこれが最後のチャンスになるかもしれません。
松原聖弥選手はなぜ出番を失ったのか
育成からブレイクした選手であり、ジャイアンツとしてはスターとして育てたかったのは当然のことでしょう。実際に背番号9を与えたことからも、球団としての期待値の大きさがわかります。
しかし、期待された方向とは違う方向へ松原選手は目が向いていたようで、数字を落とし出番を減らしてしまいました。
松原選手は小柄でスピードがあり、外野守備も強肩と俊足を活かして水準以上でした。バッティングも体格の割にはパンチ力がある選手という見方が一般的だと思います。しかし、松原選手は長打の魅力に取り憑かれてしまったのか、ヘッドを効かせたフリースインガーのバッティングスタイルを目指してしまったように見えました。
走者を置いたときのバッティング、特にノーアウトやワンアウトでサードに走者を置いているときに、簡単に三振してしまうような印象が、個人的には強く残ってしまいました。松原選手には年間30本も本塁打を植えるポテンシャルはないと思われ、振り回すバッティングは許される選手では無いと思います。特に走者を進めてほしいときや、エンドランのときなどでもバットのヘッドを効かせたスイングで空振りをするケースなどが見られ、首脳陣が求めるセンスのタイプとしては、バッティングが大きすぎて、サインを出しにくい選手だったと思います。
野球はチームプレーが基本であり、4番バッター以外はチームバッティングが基本的には求められます。そのあたりを今はアマチュアで教育しなくなったことが、影響しているのかもしれません。夢を持ち続けて自分を信じて努力することは大変重要ですが、チームスポーツでは許される範囲があります。特にプロ野球の場合は、優勝するためにチームが一丸となっていなければならず、個人のプレースタイルを優先するチームは勝てないと思ったほうが良いでしょう。特に阿部監督はチームプレーを強く求める傾向にあり、チームバッティングできない、あるいはやらない選手は、使いにくくなっていくのではないでしょうか。阿部監督も松原選手にはショートゴロを打ってくるように指導したりして春先は起用していたのですが、松原選手が意識を変えることはなかったのでしょう。そこから今回のトレードにつながってしまったのは、自然な流れなのかもしれません。
プロ入り後にプレースタイルを変える選手は決して珍しくありません。今回は新天地でどのようなプレーを求められているのか、一度確認したほうが良いと思います。
若林楽人選手の目指すもの
若林選手も本塁打を最高の結果と考えてるらしい報道がされています。また2024年の春には「盗塁、好きじゃなかったんです。スライディングにしても上手くないですし。それは今でも思っています。」と語っているようです。
今回阿部監督は、起用の前に話し合いたいと言っているようです。これはとてもいい傾向だと思います。首脳陣が求める選手になるつもりがあるのかどうか、それによって起用法は大きく違ってきます。
わざわざ盗塁が嫌いで本塁打が最高と言っている時点で、松原選手と被ってしまう部分があります。怪我の影響で盗塁ができないならともかく、スライディングがうまくないと言っている時点で、ライオンズの首脳陣と意思疎通ができていなかった可能性があります。あれだけチームが低迷しているのに、お呼びがかからなかったのも何か原因があるのでしょう。若林選手もジャイアンツで成功しなければ、後が無いと考えたほうが良いでしょう。ここは心機一転、阿部監督と求める方向を一致させて努力していく必要があると思います。
盗塁が今のセールスポイントであるならば、盗塁で出場機会を増やして、キャリアを重ねる中でホームランを狙う打撃を確立させたら良いと思います。
ライオンズとジャイアンツの求めるもの
まずは首脳陣に使いやすい選手だと認められることが、とても大切だと思います。これはプロ野球も一般社会も同じです。上司に気に入られるのはとても大切なことです。使いやすい選手、頼りになる選手になるのは、なにもホームランを量産することだけではありません。
夢を追いかける、理想を求めるのは大切なことですが、プロ野球でも一般社会でも自分を客観的に見つめ直すことは、とても大切なことだと思います。
若林選手にも松原選手にも、絶好の機会が与えられたと思います。自分を貫くことも大切ですが、自分を見誤らないことはもっと大切です。
”努力は過大評価され、判断は過小評価される。”
ユニフォームが変わって、自分を変えるチャンスだと思います。
いままでの自分がなぜ評価されなかったのか、見つめ直す時間だと思います。両選手ともすばらしいポテンシャルを持っているのは明白です。