レイダースはジェッツとの接戦に辛勝 HCに必要な能力の再認識

レイダースがHCジョシュ・マクダニエルを解任して、連勝をしました。改めてHCに必要な素養の再認識が出来た試合で、組織というものはプロスポーツでも一般社会でも同じもの、人間がやることに大差がないことが再認識できた1戦でした。

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ブルーカラーのチームのレイダース

勝利後のインタビューで、”俺たちはブルーカラーのチーム”と答えていたのがとても印象的でした。もともとフランチャイズのあったオークランドは、お隣のサンフランシスコとは違い、ブルーカラー(労働者)の街です。サンフランシスコが、シドニー、シンガポールと伴に、”3S”として駐在員の3大理想都市とされた頃に、レイダースはオークランドにフランチャイズを置いていたのですから、その対比はアメリカ人ではなくても理解できます。その頃のサンフランシスコは、アメリカでは珍しく坂の多い特徴的な街で、素晴らしい雰囲気のある街でした。どちらかというと何処に行っても大いなる田舎の雰囲気が強いアメリカですが、ニューヨーク、シカゴと伴にサンフランシスコは美しい街でした。

そのお隣のオークランドは労働階級の街です。チームのイメージである荒くれ者は、街の雰囲気にぴったりで、ファンが多いのもうなずけるレイダースです。

マーク・デイビスの描いたシナリオ

その荒くれ者のチームに、いけ好かないエリートが管理職として現れるのは、よくある映画のストーリーです。荒くれ者が多い結果のでないチームを、エリートHCがチームと摩擦を起こしながらも、お互いの情熱を燃やして結果を出し、最後は勝利へと進んでいくというストーリーは、アメリカ人の最も好むストーリーです。加えて言えば、そのHCは1度他のチームで失敗をしており、その苦い経験から再び挑むという物語の設定は、ド定番と言ってもいいものでした。おそらくマーク・デイビスもブロンコスでの失敗を糧にしたHCマクダニエルがやってくれるという、感動のシナリオを望んだのだと思います。

チームの尊敬を得られなかったHCマクダニエル

しかし、実際はHCマクダニエルがチームの信頼を得られなかったという結末だと思います。チームは長年貢献してきたQBデレク・カーを放出して、HCマクダニエルの思う通りのチームを編成しました。この判断は間違いではなかったかもしれません。しかし、結果が悪すぎました。HCの一番大切な役割であるモチベーターとして、HCマクダニエルは素養が足りなかったとしか言いようがないと思います。OCとしては能力が十分に認識されていたものの、HCとして失敗が続いてしまった事実は、動かしようがない事実となりました。チームの不満は戦績以上に溜まっていたようで、ある程度の勝ち星があったにも関わらず、中心選手から不満が出るようになり、最後は空中分解してしまった様に見えます。結局組織というものは、上に立つものが先頭に立って結果を出さなければ、瓦解してしまうものだということがはっきりわかる結末でした。

先頭に立つモチベーターの暫定HCアントニオ・ピアース

HCとしての実績がないものの、モチベーターとして暫定HCに選ばれたのは、生粋のレイダーを名乗るHCピアースでした。彼の指導者としてのキャリアはHCになるべくものではなく、何処までいってもLBコーチという印象のものです。そのピアースがHCに選ばれたのは、前HCマクダニエルと正反対の素養に、マーク・デイビスがかけたのではないかと思います。HCピアースはドラフト外でNFLに入り、プロボウラーになり、スーパーボウルにも勝利した叩き上げの選手です。HCとしての能力は足りずとも、OCとDCを信頼してチームを鼓舞する姿勢は、自分の能力を知っている大人の管理職というイメージです。

エリート管理職の下で我慢をしてきた選手と首脳陣達が、一気にまとまったのがここ2戦の勝利に繋がったと推測できます。チームのHeart&Seoulと名指しされたRBジョシュ・ジェイコブズが、一気に爆発したのは偶然ではないでしょう。チームを代表して不満を表明していたWRダバンテ・アダムズが喜びを爆発させているのも、スーパーキャッチの後のクールさが戻ってきたのも、とても印象に残ります。

ゲームを決めたのは叩き上げのLBロバート・スプレイン

最後にインターセプトを奪ってゲームを決めたのが、ドラフト外の叩き上げLBスプレインだったところも、アメリカ人が大好きなストーリーでした。LBコーチだったHCピアースを最後に助けたのは、苦労をともにしてきたLBスプレインだったところに興奮せずにはいられませんせしたし、最後のインタビューにピアースを呼ぶ放送局も、流石に”わかっているなぁ”と感じざるを得ませんでした。そして「俺たちはブルーカラーのチームだ。」と答えたのが他でもないスピレインだったところが、感動的な試合でした。

マーク・デイビスが描いたシナリオとは全く違うものになりそうですが、ここからプレイオフまでたどり着けば、それはそれでアメリカ人の大好きなストーリーが出来上がるのではないかと、密かに期待してしまいます。

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