平均寿命や健康寿命が長くなるに従って、ゴルファーの高齢化が進んでいます。私が週末・休日に行くゴルフ場も、現役世代よりもリタイア世代が目立ちます。団塊の世代がすべて70歳を超えたことによって、70代のゴルファーがどの世代よりも多いという現実は、驚きはしますが、良く考えれば当然のようにも見えます。
70代のゴルファーの現実
最近の70代は颯爽としていて、年齢不詳の方が多く見えます。ゴルフも若々しい人が多く見えますが、実は一番距離が落ちるのが70代だと思います。過去にクラチャンだった人も75歳辺りから、急激に距離が落ちる傾向にあるようです。当然アベレージゴルファーも距離が出なくなることは当然で、80代のゴルファーで距離を保てる人は稀有な存在です。そういった方たちはゴルフにかける時間が必然的に多くなり、競技委員などの役職も受け持っていただいているケースが多いようです。競技に出場している年齢層も高齢化が進んでおり、若いゴルファーたちの存在感は相対的に薄れていっています。
シルバー民主主義の弊害
高齢者のための政治が問題視されますが、ゴルフ場も例外ではありません。若い世代への配慮が少なく、高齢者への忖度が過度に見えるのは、私だけではないでしょう。
例を挙げていきましょう。
狭くなるコース
高齢者が増え、女性が増えたゴルフ場は、とにかくOBが増えていきます。上級者の高齢者や女性と廻っていると、全くラフにいかないことに驚きます。距離は出ないので左右のブレが当然少なく、OBは殆打ちません。私のように乱れるプレイヤーは当然のように隣のホールへ打ってしまいますが、ほとんどOBになってしまいます。過去10年を考えてみても、以前はOBゾーンではなく、隣のホールからグリーンを狙う事が可能だった場所がすべてOBゾーンになってしまいました。安全上の都合もあると思うので一概には否定できませんが、右も左もOBというホールが殆どで、気持ちよく振れるホールは殆どないのが現状です。
また、最近のゴルフ場はOBゾーンがフェアウェイに寄ってきているのか、木の下から出すだけというシーンも減ってしまいました。木の下からや木の間からグリーンを狙うというのもゴルフの楽しみ方だとは思うのですが、樹木の保守も費用がかかるので、そういったゾーンも減っているのかもしれません。
こういったロングヒッターが不利になるコースの改修が多いと感じるのは、決して私だけではないと思います。
無くなるバンカー
深いバンカーも無くなる傾向にあります。女性や高齢者には深いバンカーから脱出できる力がない場合が多く、上級者でも一気にスコアを崩してしまうケースが多いことが原因のようです。コースの改修に意見を言える立場の人も高齢者が多いので、難易度の高いバンカーは無くなる傾向にあるようです。また、バンカーの砂は価格が高いようで、豊富に砂を入れてあるバンカーは少なく、砂の層が薄く硬いバンカーが多い傾向にあります。コースをメンテする側から言えば、バンカーをなくすことは経費削減にも繋がり、バンカーを無くす方向は願ったり叶ったりのようです。そして無くなったバンカーはグラスバンカーになりますが、やはり深いグラスバンカーは高齢者や女性には厳しく、数年経つと盛土がされて更に優しくなっていました。コースレートが72までいっていないのに、更に優しくする改修は、方向性の誤りだと思うのですが、民主主義とは恐ろしいものです。
フロントティーの積極的活用を
女性用のティーというとあまり聞こえは良くありませんが、高齢者用のティーを設置してもっと使いやすくしてほしいと思います。女性用のティーも、もっと前に出してあげたほうが良いと思うのですが、メンテなどを考えると難しいのかもしれません。
飛距離と腕前は必ずしも比例しませんが、若い人が思い切りスイングできないゴルフ場は、ゴルフの醍醐味を著しく毀損していると思います。高齢者や女性を慮るのは悪いことではありませんが、そのために若者のやる気や向上心を削ぐようなやり方は、スポーツを愛好するものとしては間違った方向であると考えます。
日本の社会の縮図のゴルフ場
若者がもっとのびのびと楽しめるゴルフ場は、将来のゴルフ産業のためにもなります。もう少し長い目で物事を捉えてもらいたいと思います。
バンカーを無くし、OBを広げるのではなく、女性ティーをもっと前に出し、高齢者のティーをもっと使いやすくしたほうが、みんなのためだと思うのです。絶対に届かないパー4なんて、あまり楽しくないですよね。
間違った方向を自浄できない社会は発展しません。日本経済も間違った方向性を未だに直すことができません。
いろいろと国民は政治家に文句を言いますが、政治家は決して優秀な人達の集まりではありません。やはりビジネスで成功している人たちとは、雲泥の差があるといっていいと個人的には思っています。
ゴルフ産業やゴルフ場が発展する方向へ、すべてを考えていってもらいたいものです。その中で女性や高齢者に対する思いやりを持っていかないと、本末転倒になってしまいます。