ジャイアンツの阿部監督がいろいろと話題を提供してくれています。新外国人のモンテス選手が加入することによって、守備位置のフレキシビリティが増したところで、様々なプランが明らかになりました。ここまでの阿部監督の采配を見ていると、言っていることがくるくる変わっているように見える事もありますが、それをどう評価するのかは結果によるというのが正解でしょう。ただファンとしての一番の望みは、阿部監督の考えの通りにやってもらいたいということだけです。
君子豹変する
これはいい意味で過去にとらわれないということです。豹変は正しい方向に変化するということなので、結果が伴う必要があるということです。
ここまでの阿部監督の采配は、短期的な目線ではなく、ある程度長いビジョンを持って行われているように見えます。
権力者というものは間違いを認めたくないものです。とりわけ権力者になって長い人ほどその傾向が強く出ると思います。阿部監督は指導者歴は2軍などで積まれていますが、1軍での監督は初めてということで、軌道修正をしやすいということが背景にはあると思います。
それにしても柔軟な態度が目につくところは、特徴的なところだと思います。
高橋由伸監督とは違いスタッフを選ぶ事ができた
豹変することができるのは、意見を吸い上げやすい有能なスタッフを選ぶことができたからではないでしょうか。比較するのは気が引けますが、高橋由伸監督とは置かれた状況が大きく違うことがあるのではないでしょうか。高橋監督の場合は引退から監督就任まで時間がなかったので、原監督のスタッフを引き継いだ感が強かったと思います。阿部監督の場合は監督への就任に十分な準備期間があったので、就任が決まると同時にスタッフが集まったのではないでしょうか。内海哲也投手コーチなどはインタビューで、阿部監督の就任を待っていたことを明らかにしていました。内海コーチの引退セレモニーで、高橋由伸さんがゲストとして”またいつか一緒にやれるよな?”という印象的なコメントを残していました。今年の投手陣が大きく改善したところには、杉内チーフコーチと内海コーチという二人のコーチの貢献は大きく、その二人は長年の阿部捕手との信頼関係があることが、いい影響を与えていることは間違いないと思います。
年上のご意見番として二岡智宏ヘッドコーチを据えたことは、良い構えであることは当然で、このような立ち位置のコーチは長期政権の始まりには必要な存在ではあるでしょう。
更に言えば村田善則総合コーチと實松一成バッテリーコーチの存在が、ベンチ内でもクローズアップされているようで、試合運びや準備に抜かりが無いことの原因になっていると思います。今年3人の捕手をローテーションして使って成功していますが、その要因になっているのは、村田コーチ、實松コーチの存在の大きさがあるのではないかと思います。
モンテス選手獲得に見る阿部監督のリスクコントロール
当然のようにシーズンが深まるにつれて、不可抗力や計算違いは出てきます。主力選手の怪我や思わぬ不調などは、ある程度は計算していると思いますが、プランBを用意できているかどうかは、監督のリスクコントロール能力に関わることだと思います。昨年坂本勇人選手からショートを奪った門脇誠選手の今年の不調は、大きな誤算だったのではないでしょうか。昨年後半に覚醒した打撃がここまで振るわないのと同時に、守備にまで綻びが出てしまったのは意外でした。しかし昨年のドラフトで泉口友汰選手を補強しているところは、門脇選手を信頼しながらも信用していなかった、阿部監督のリスクコントロールが功を奏したのではないでしょうか。2年目のジンクスとは言いませんが、それに近いことがいつでも起こり得るところを抑えているのは見事でしょう。リリーフ陣についても過剰なまでに頭数を抑えたのは、キャッチャー目線でのリスクコントロールがされていた証だと思います。この時期にモンテス選手を獲得したのも、付け焼き刃ではなく以前から調査を進めていたからに他ならないでしょう。
ぶれない阿部監督
阿部監督が豹変する中で、基本的な部分はぶれていないと思われます。守備を大切にすること。一発に頼らないこと。常に走者を進めることを優先すること。賛否は当然ありますが、阿部監督のやる野球にはブレが見えません。これは選手たちもとてもやりやすいと思います。相手ベンチを惑わすために味方の選手が動揺してしまうようでは、チームとしては動けません。阿部監督の基本方針がブレない中で、変化が出ている今のジャイアンツの戦い方は、選手たちもやりやすく、コーチたちも準備がしやすいと思います。今後方針が多少変わることは当然あるとは思いますが、それも首脳陣と選手たちの意思疎通が図られてからだと思います。
こうして考えてみると、原監督のもとで過ごしたコーチの経験は、様々な形でいい影響を与えているのではないかと思います。
阿部監督の成功が続くことを切に願います。
ただ、それと同時に高橋由伸監督の時代が来たときには、準備万端の采配をファンとしては見たいと思います。