97試合を消化して貯金が2ということは、間違いなく中位のチームです。タイガースが18、カープが13の貯金をしている中で、優勝は極めて難しいと言えるでしょう。ベテラン頼みのチーム構成はシーズンが深まるほど、故障者が増え、疲労により調子を落とす者も出てくるので、上がり目のないチームと言えます。これから若手の台頭が一気に来るならばともかく、今の用兵ではそれも現実的ではないようです。果たして原監督の目指すチームはどの様なチームなのでしょうか。
強かった時期のジャイアンツ
V9は緻密な野球で無敵だった
ONを擁したV9の頃は、今のジャイアンツとはかけ離れた野球をしていました。ONは絶大な信頼を得ているため、送りバントなどは、ほぼ有りえませんでした。そのかわりONを取り巻くプレイヤーたちは、ONを活かすための野球を徹底していました。
1番柴田勲選手は3割を一度も達成すること無く、2000本安打を達成した名プレイヤーですが、579盗塁は特筆するべき実績です。2番の高田繁選手も1384安打を放ち、200盗塁を記録しています。時代が違うとは言え、ONの前で極めてうるさいリードオフマンだったと思います。柴田さんによれば盗塁についてはすべてサインであって、グリーンライトなどなかったということですから、その価値は高まります。その他にも土井正三選手や黒江 透修選手など脇役の人材には事欠かない布陣です。バントやエンドランなどを自在にできる脇役たちは、相手投手を消耗させる選手だったと思います。本塁打頼みの今のジャイアンツでは考えられないような、多彩な野球ができたと思います。
長嶋野球は4番ばかり
FAが導入されてからは、ジャイアンツに各チームの4番が集まるようになりました。どの打者も率も本塁打も打てる選手ばかりで、バントなどは必要なかったと思います。ファンが夢に見たような重量打線は、FAの導入で夢ではなくなり、実現してしまいました。しかし、V9ほどの強さを発揮することはできずに、脆さを見せることも有ったと思います。あの頃のジャイアンツ打線はタレントだけを見れば間違いなく史上最強だと思いますが、ペナント連覇を達成したことはなく、重量打線が必ずしも理想ではないことがわかります。現状のジャイアンツ打線は本塁打でしか得点ができず、長島政権時代の劣化版という位置づけになってしまうでしょう。3年連続V逸であれば、重量打線が強豪チームの最終回答ではないことを、あらためて認めて反省しなければならないでしょう。
逆指名時代のジャイアンツ
逆指名によって新人を補強できた時代は、V9時代に次ぐ強豪チームだったかもしれません。1番仁志、2番清水の並びは素晴らしい上位打線でした。高橋由伸、松井秀喜、清原和博、江藤智、二岡智宏、阿部慎之助と続く打線は脅威の一言です。FAと逆指名が可能だった時代は、ベテランと若手がバランス良く配置され、育成の必要性も感じられなかった時代です。この時期の成功が、高かったジャイアンツの育成能力を劣化させてしまったのではないかと思います。脚力に優れた選手が多く、守備力も高かったこの頃は、本当に隙のない布陣だったと思います。原監督の理想のチームは、この頃だったのではないでしょうか。特に長打力を秘めた1番仁志は、未だに1番打者に長打力を求める原監督の理想の1番打者なのかもしれません。柴田勲さんも194本塁打を放ち、長打力が無いわけではありませんでしたが、どちらかというと走力が際立っていたと思います。長打力よりも、走力を生かした起用がされていたとも思えます。
現在のジャイアンツは大味な打線
世代交代の最中にある現在のジャイアンツは、強豪チームとは言えないでしょう。打力はあるものの、試合運びが下手で本塁打以外では得点ができないチームは、強豪チーム、常勝チームとは言えません。過去に大洋ホエールズが、長打力がある打者を並べながら勝てなかった頃を、なんとなく連想してしまいます。
ソツのない攻撃をしなければ勝てないのはわかり切っているのですが、ソツのない打撃をできる人材がほとんど見当たりません。本来であれば脇役に徹しなければならない吉川尚輝選手たちが、確率の悪い早打ちで相手を助けてしまっています。出塁率も物足りない状況で、振り回すだけのように見えてしまいます。
現在8番を打っている門脇誠選手が、亀井打撃コーチの教えの元で、力を発揮しつつあります。門脇選手が1番を打てるようになれば、打線のつながりが良くなるのではと期待しているのですが、原監督はどの様に考えているのでしょうか。
まだ仁志選手のような長打力を1番に求めているようならば、大味な野球は治らないと思います。本塁打攻勢は少し力の落ちた投手には威力を発揮しますが、力が上位の投手に対しては、からっきしです。日本シリーズ悪夢の8連敗で経験したことを、活かせているのかどうか、少し疑わしいところがあると思います。
このまま大味な攻撃の打線を続けていても、日本一にはなれないのではと危惧します。