円安が日本経済にとってマイナスだという意見がありますが、かなり的はずれだと思います。現役を離れた年金ぐらしで日本円をたくさん持っている人は円高が良いのでしょうけれど、その他の人たちには円高はあまり恩恵がないと言っていいと思います。
円安でグローバル企業が海外で儲けても日本国民に恩恵なし
円安で海外での利益が膨らみ、グローバルに展開するエクセレントカンパニーが利益を上げています。当然日本経済にとってはプラスに働きますが、日本の国民にとって、特に労働者にとって恩恵があるかといえば、かなり限定されているものになると思います。
例えばトヨタが海外の現地生産で挙げた利益は、海外現地法人とトヨタ本社の利益です。その利益の恩恵を受けるのは、海外現地法人とその従業員、そしてトヨタ本社とその株主に限られます。日本で働くトヨタの従業員には恩恵があまりないのは、当然のことでしょう。
例えばフランスの会社が日本で現地生産をして、日本で利益を大きく上げた時に、その恩恵をフランスの従業員が受けるのでは、日本の従業員は浮かばれません。トヨタが利益を世界中で上げても、日本の従業員が同じ様に恩恵に預かれないのは、当然のことと言えるでしょう。日本の工場で利益が上がらず、海外の工場で利益が上がっているのであれば、トヨタ本社は現地法人の給与は上げると判断するでしょうが、利益の上がらない日本の工場の従業員の給与を上げることはなく、むしろ生産能力の縮小を考えなければなりません。
円安で日本のものづくりが復活
日本の労働者が賃上げを勝ち取るためには、日本で作ったものを海外で売って利益を上げるのが勝ち筋です。日本は人口減少が続いており、消費も盛り上がりません。そうであれば、購買力のある海外へものを作って売るのが、経済を立て直す近道であることは間違いありません。円高で日本人の購買力が一時的に上がっても、それが実際の購買に繋がらないことは既に見えています。
日本はかつて加工貿易と言われる手法で海外に物を売って成長を遂げました。プラザ合意以降その手法は奪われ、現地での生産が進みました。しかし、前述した通り海外現地法人の利益は日本の従業員を潤すことはありません。やはり国内で作って国内や海外で売らなければ、日本の労働者の賃金は上がらないのです。
日本は人口減少で需要が先細りしています。となれば、海外の購買力に頼らざるを得ないのです。海外の購買力によって日本の経済が潤い、日本の労働者に恩恵があれば、賃金は上がっていきます。いくら政府が賃金を上げて欲しいと叫んでも、持続するはずはありません。
円安を悪く言うメディア
日本全体が上がっていくためには、海外の需要を取り込まなければならないのに、メディアは円安のデメリットばかりを取り上げます。しかし24年6月は3ヶ月ぶりに2240億円の黒字になっています。円安によって原油などの輸入面においてマイナスとなり輸入額があがったものの、半導体や自動車の輸出が伸びたために、貿易収支は黒字になっています。この円安が定着すれば、海外にシフトしていた生産を国内に回帰させる動きが出てきます。円安によるデメリットはすぐに出ますが、メリットは即効性がありません。
熊本のTSMCがいい例で、円安メリットが出てくるのはこれからです。
日本のメディアは円安のネガティブな面だけを強調しますが、あまりに偏った報道だと思います。
もっと日本のメディアの経済リテラシーが上がれば、こんなことにはならないと思うのですが、ネガティブな側面ばかりを強調する報道のやり方は、もう少し改める必要があると思います。
円安については近隣窮乏政策といわれており、トランプさんは既に円安を批判しています。日本のメディアが銃撃のことやバイデンさんの撤退ばかりを報じていますが、トランプさんが大統領になった時の経済政策がどの様に日本の経済に影響するかを報じていません。逆に言えばそういったリテラシーを高めることで、今の円安を批判することに対しての日本人の理解も変わってくると思います。
行き過ぎた円安を批判するとありますが、長い目で総合的に見た時に円安はメリットでしか無いと思います。だいたい為替は株価と違い、行き過ぎることはあまり無いと思います。為替がバブルになることは考えられないということです。
日本はものづくりの国
日本の強みは製造業であることは間違いありません。金融やプラットフォームづくりで覇権を取ることは、まずないでしょう。日本語が共通語になることはなく、そのハンデはプラットフォームづくりではとてつもなく大きいと思います。
ものづくりは日本語のハンデを感じさせない環境となっています。
円安によってもう一度日本が世界の最先端工場になるときが、来るのではないでしょうか。その時初めて日本の中産階級が復活するのではと想像しています。
