今と昔の野球を比較する事の無意味について 何でも現在が優秀とは言えない

過去の選手と今の選手を比べる論議というのは、いつの時代でもされています。

昭和の時代に40勝もした投手と、今の投手の勝ち星を比べることで、投手の力を評価することは無意味でしょう。また、今の投手が160kmを投げるからといって、過去の速球投手が遅かったと決めることもできないと思います。

ファンの中にはプロ野球のOBが、”我々の時代のほうが凄かった。”と発言することに対して、昔はレベルが低かったと否定的な見方をすることがあるようですが、それは言いすぎだと思います。

江川卓投手と佐々木朗希投手はどちらが速いのか

代表的なのが、江川卓投手と佐々木朗希投手、どちらが凄いかという論争でしょう。これは比べることは全く無意味だと思います。

まず第一にスピードガンは目安であって、必ず速度を正しく測定できるものではありません。特に昔のスピードガンは精度が低かったようです。

道具と環境の変化

またマウンドの硬さもぜんぜん違うので、出力に大きな違いがでてきます。最近の日本のマウンドは硬くなってきているので、スピードも出やすくなっているようです。

一時期日本からメジャーに渡った投手のスピードが、ことごとく上がった時期がありました。これはマウンドの硬さが影響していると言われていました。

例えば体操の床運動はどんどん技の難易度が増して、女子でも2回転宙返りが難なくできていますが、これは床の影響があると思います。床の下にはクッション材やバネが入っているので、跳躍はし易いはずです。

フィギュアスケートも同様です。氷が固くなればジャンプは高さがでますし、回転もしやすくなります。フィギュアの場合は靴の軽量化も影響が大きいでしょう。

確かに体操もフィギュアスケートも、現在の選手たちの技術の向上は目を見張るものがあります。しかしそこには、道具の進化や環境の変化の影響がある事を無視できません。

全力投球をしない江川投手

プロ野球の過去のエースたちは、完投が当たり前でした。しかも中4日、5日が当たり前だったので、今のローテーション投手とは置かれている状況が違いすぎます。

江川投手は高校、大学と連投に次ぐ連投で。全力投球は殆していないようです。プロになっても相手の中心打者以外は、良い意味での”手抜き”をしていました。今のように中6日で100球制限であったり、1イニング限定のストッパーであれば、もっと凄い投球が見られたかもしれません。江川投手が現役の頃は、100球肩などと揶揄される時代だったのですから・・・

400勝の金田正一投手

時代は違えど、この記録は凄すぎます。いくら環境が違えど、これだけ投げて肩が壊れなかったのですから、まさに怪物です。米田哲也投手の350勝、小山正明投手の320勝と300勝以上の投手が6人いますが、今の投手たちでは抜くことはまず無理でしょう。

金田投手は20歳になったシーズンまでで、通算77勝を上げています。対して佐々木投手は12勝で、差がありすぎます。打者のレベルが云々の差ではないことは、明らかです。

投球回5526回、奪三振4490個は圧倒的すぎます。

体のケアなどが今よりも難しかった時代に、この通算記録は考えられない数字です。

今の時代のケア

ただ金田投手が今の時代のケアをしていたら、もっと投げられていたかどうかはわかりません。マウンドが固くなり、スピードが出るようになれば、関節や靭帯に掛かる負担は増えてくるでしょう。その時に金田投手の肩肘が故障しないという保証はありません。つまり簡単に比較はできないということになります。

野手も比較は難しい

投手の球速は上がっていますが、回転数も上がっており、飛距離は出やすくなっているでしょう。バットもボールも同じ条件ではないので、比較困難です。

体の作り方が、現在のほうが科学の進歩により簡単になったとは思います。

ただ野球は打つだけではありません。

守備は今の方が簡単

人工芝の球場が増えたり、ドーム球場になったりで、今は守りやすくなっているはずです。またコリジョンルールができて、野手は怪我のリスクが減りました。キャッチャーは小柄な選手が増えましたが、ルール変更の影響が大きいと思います。二遊間も併殺の際のランナーのゲッツー崩しが無くなったので、とても簡単になったと思います。個人的にはランナーを避けながら投げるセカンドのプレーが大好きだったので、とても残念ですが・・・・・

キャッチャーはどんどん楽になる

以前は完投が当たり前だったので、球威を抑えた中で4回り抑えるインサイドワークが必要でした。しかし今は3回りで十分で、球威が衰えれば交代です。リリーフは1イニング限定なので、全力のストレートで抑えることができます。これで近い将来ピッチクロックが導入されれば、キャッチャーの仕事は大幅に減ることになるでしょう。

プロテクターで避けない打者たち

以前のようにインコースの攻めに厳しさが無くなり、踏み込んで打つ打者が増えたのは、大きな変化でしょう。危険球のルールもできて、頭部付近へのブラッシュボールは殆ど見なくなりました。。乱闘も無くなり、今の野手たちはやりやすいと思います。以前は4番とキャッチャーで強く踏み込む選手は、殆いなかったと思います。

こうして考えてみると、今と昔を比較することは、本当に無駄なことだと思います。レジェンドたちの記録はその時代時代の価値があり、今も色褪せるものではないということは、間違いないのではないでしょうか。

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