飛ばなくなったボール プロ野球選手には死活問題 NPBの問題

明らかに今年のプロ野球はボールが飛ばなくなりました。3割バッターが両リーグ合わせて5人しかいません。投手の方は規定回数に達している投手で、防御率2点以下が12人もいます。公式球の規格が変わったという報道はありませんので、規定の中での変更と考えていいでしょう。しかし、変えるならば変えるで何かしらのアナウンスが有っても良いのではないかと思います。

飛ばないボールへの流れ

これはNPBに限ったことではないでしょう。高校野球で金属バットの規格が変わったのは昨年のことです。これによって甲子園大会で大幅に長打が減りました。危険防止などの観点から、この変更には好意的な意見が多かったと思います。

世界でも競技は違いますが、ゴルフ界で飛ばないボールに変更することがアナウンスされ、2028年から実施されることが決まっています。

ゴルフ場のコースの長さを伸ばすことには限りがあるので、こういった変更は当然の流れと言っていいと思います。クラブのフェイスの反発係数について規制がかかったのは2008年ですから、20年経たずに新たな規制が加えられたことになります。我々アマチュアにすれば技術の不足と体力の衰えによって、かなり影響が出そうですが、甘んじて受けいれるしかありません(笑)。

NPBに関してもこの流れは当然のことで、ある程度の調整は必要だと思います。

事前のアナウンスがないのは問題

しかし、こういった変更についてアナウンスがなく、猶予期間も設けずに変更することには違和感を覚えます。メジャーはルールなどの変更について頻繁に行い、その柔軟性が目立ちます。しかし、NPBの場合は何を決めるのも時間がかかり、問題を先送りして、政治の世界と同じように”棚上げ”することが常という状態だと思っていたのですが、これはどういったことなのでしょう?

増税をせずに社会保険料を上げる。定価を上げずに内容量を減らす、ステルス値上げ。日本の政治経済のシーンでは珍しくない光景ですが、ルールを重んじるべきスポーツの場で、このようなことが行われているとしたならば、許されることなのでしょうか?

選手には死活問題

選手の立場からすればこの変更は死活問題です。選手はボールの反発係数によっては、プレイスタイルを変えなければならなくなると思います。特に今回の変更の場合、体重が少ない小柄な選手には影響が大きくなりそうです。小柄な選手でも小力があると形容される様な選手の場合、長打の可能性が極端に少なくなり、外野手が前に守るようになります。そうなれば内野と外野の間に落ちるポテンヒットの可能性が小さくなり、小柄な打者は極端に不利になるでしょう。

ボールはすぐに変えられるが

ボールを変えるのは簡単ですが、選手がプレースタイルを変えるのは簡単ではありません。肉体の改造にも時間を要します。本来であれば正式にアナウンスをして準備期間を与えなければ、選手は対応に困ります。選手生命は短く、5年以下の選手が大半です。急に変更があり、その対応のため2年経ってしまえば、選手によっては引退になってしまう場合さえあるはずです。こういった考え方をNPBができないのは、非常に問題があると思います。

選手会も気が利かない

選手会の役員は有名選手ばかりで、選手寿命が長い選手のことしか頭に浮かばないのではないでしょうか。本来選手会は強い立場の選手よりも、弱い立場の選手を守ることが目的のはずです。代理人を自分で立てられるような選手よりも、短い期間で戦力外になってしまうような選手のことを第一に考えなければならないはずです。いつまでも有名選手が幹部ではなく、交渉のプロを幹部に据えるべきではないでしょうか?

スカウト活動も変わるはず

今年のようにボールが飛ばなくなってしまえば、プロでの立ち位置を考え直す必要が出てくる選手は、決して少なくないと思います。

もっといえば、高校からプロに志望届を出す際の考え方が大きく変わるはずです。プロに入って肉体を改造することによって、プロに対応できると思っていた選手が、実は5年の間にそれを実現できない可能性が強くなるでしょう。

スカウトたちもこんなに球が飛ばないのであれば、非力な選手を高校から取ることはハードルが高くなると思います。

こういった影響を考えれば、適切な時期のアナウンスと、それに伴う猶予期間などを考慮する道義的な義務がNPBに生じるのではないかと思います。

ルールの変更は明らかに

どのみち後からわかることですので、こういった変更は広くアナウンスするべきで、ステルス的な変更はやるべきではないと思います。今回のようなやり方は、選手や首脳陣、スカウトなどの球団フロント、プロを目指すアマチュア選手たち、そしてなにより大切にしなければならないファンにとって不誠実ではないかと思います。日頃からファンを大切にせよと選手には教えているはずのNPBがこういった姿勢でいるのは、非常に問題があると思います。

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