プロ野球開幕から阪神と日本ハムの成績が上がりません。日本ハムは1勝8敗で首位と7ゲーム差。阪神は9連敗で8ゲーム差と、スタートダッシュに失敗してしまいました。開幕前は何かと話題の多かった2球団ですが、開幕後は悪い意味で目立ってしまっています。
絶対に出遅れてはいけなかった阪神タイガース
キャンプイン前日に、今年1年限りで退任を発表した矢野監督。異例の発表でその狙いは何だったのか、大きな話題となりました。その理由について、最後の1年ということで背水の陣を引き、選手を鼓舞するためという説。マスコミにいろいろ批判されないように、好きなように選手起用をしたいがためとういう説。ただ単純にプレッシャーからの逃避など色々考えられますが、いずれにしてもスタートで出遅れることは許されませんでした。あと1年ということが決まってしまえば、監督の求心力は間違いなく落ちます。序盤に好成績で優勝の目がでてくれば、最終年を飾るという美談も成立します。しかし序盤に出遅れてしまえば、急速に選手のモチベーションが落ちていくことは間違いないでしょう。
矢野監督の背水の陣
もし仮に矢野監督が退路を断って、背水の陣を引くという気持ちだったならば、あまりに独りよがりの考えだと言わざるを得ません。当たり前のことですが、選手たちは現役生活が続いていきます。今年1年の成績が悪くても、来年も現役生活は続きます。見ているゴールが監督と選手で大きく離れてしまえば、チーム力は落ちてしまいます。優勝というゴールは同じだと言うこともできますが、選手たちは2位でも最下位でも来年の現役生活は続くのです。監督の仕事がモチベーターであるのは間違いのないところで、選手と監督の気持ちが離れてしまえば、それは監督が職責を放棄したと言えるのではないでしょうか。優勝という共通のゴールを見失ってしまえば、選手と監督の気持ちは離れて行くだけです。
新庄監督の1年契約
阪神の矢野監督と事情は異なりますが、新庄監督も今年限りの契約を交わしています。もし結果が出なければ、今季限りで退任という可能性が十分にあるということです。チーム力が球団の方針によって優勝を狙えないという事情にある中で、選手と監督は何処を目指せば良いのでしょうか。新人選手や実績のない若手ならばともかく、現役生活が残り少ない中堅選手やベテラン選手は、モチベーションが上がらないのではないでしょうか。自分の年俸アップのためにひたすら頑張ると言っても、チーム力が上がらなければ個人成績も伸びていきません。エース級の投手であっても打線の援護や堅実な守備がなければ、勝ち星はつかず防御率も良くなりません。どんなに素晴らしい打者でも、打線の中で一人だけ徹底マークされてしまえば、本塁打も打点も増えません。そこに長期的計画のない監督が就任すれば、残り少ない貴重な現役生活が無駄になってしまいます。新庄監督の1年契約で勝負するという気持ちはわかりますが、選手たちには良い影響は与えないのではと思ってしまいます。
両チームの共通点 一番困るのはコーチたち
選手はまだ実力さえあれば、来年の契約は補償されます。しかしコーチ達はどうでしょうか。監督が退任したときに多くのコーチ達は職を失う可能性が高くなります。あと1年で終わりということになれば、選手の育成も短期的目線でしか見ることができないでしょう。これでは選手の育成に支障が起きます。選手たちも、来年いなくなることが確実視されるコーチ達に対する信頼度を高く保つことは、難しいのではないでしょうか。
そして一番の問題点は、コーチ達は来年の就職活動を始めなければならなくなってしまうという事です。現役時代の華々しい実績や、コーチとしての実績があればそれ程焦ることはないと思いますが、そうではないコーチ達は来年のことが心配になります。退陣が噂されるチームのコーチ達が、シーズン終盤に就職活動を始めることは、決して珍しくないようです。シーズン開幕前から退陣がほぼ決まっているとしたら、コーチや選手たちに及ぶ悪影響は決して小さくないのではと思います。