巨人がヤクルトとの直接対決3連戦の初戦に破れ、6.5ゲーム差となって優勝はほぼ絶望的となった。敗因として小林捕手のリードや原監督の采配、中田選手の不調などが挙げられている。それぞれ要因の一つとしてあげられるだろうが、根本的原因は他にあるのではないだろうか。他球団を凌駕する補強資金を、つぎ込んでいるのに結果が出ないのは何故なのだろうか?
チーム強化戦略の失敗
ドラフトの成果が出ない
直近2年のドラフトで指名した13人のうち投手は7人いるが、1軍で登板した経験があるのは平内龍太投手だけだ。2019年は3人指名しているが、3人とも入団後に手術している。
2020年指名の4人は大卒・社会人だが、即戦力には全くなっていない。
他チームは即戦力投手が活躍したり、高卒2年目のヤクルト奥川恭伸投手や阪神及川雅貴投手がしっかりと頭角を現したりしている。
これは偶然ではなくスカウティングと育成能力に問題があると言わざるを得ないのではないか。
野手においても今年は1年目の佐藤輝明選手、中野拓無選手、牧秀悟選手など豊作なのに指名できなかった。佐藤選手はくじを外したのでやむを得ないが、中野選手と牧選手は獲得できた。特に牧選手は巨人の補強ポイントの二塁手をこなすことが可能な守備力を持ち、打撃も素晴らしい。出身校は巨人とは極めて太いパイプを持つ中央大学だ。佐藤選手を外した後に何故補強ポイントを変えて投手に行ってしまったのかが理解できない。
牧選手に関しては巨人と縁深い中央大学で情報を取る機会は十分あったはずなので、情報を分析する能力がなかった、簡単に言えばスカウティング能力がなかったとしかいえないのではないだろうか。
FA補強の弊害
FAは何年かに一度、ピンポイントで目玉選手を取るならば効果はあるだろう。しかし基本的にはFAで取る選手は年齢の関係で、成績が下降線になる可能性が強い。そして年齢を重ねた野手は機動力が落ちる。さらにFAで獲得する時に、年俸以外の付帯条件を付けていることがある場合があるので、起用が難しくなる。峠を超えた走れない野手が増えていけば、チームは活性化しない。FA選手をすぐに放り出せば体裁が悪いので、多少成績が悪くても使わざるを得ない。こうして走れない一発狙いの、淡白な打線が出来上がってしまう。他チームは外国人選手で長打力を補うので、成績が落ちれば切りやすく長打を期待する日本人選手は3人もいれば十分だ。
巨人の場合は重量打線といわれ、持て囃されることが多いが、狭いドームでなければ機動力の無さが露呈する。
やみくもにFAで補強すればいいと思うその姿勢が、一番の問題なのではないかと思う。
捕手のリード
巨人の捕手陣はリードを酷評されることが多い。今日も解説の谷繁さんに酷評されていた。
リード評価は結果論と言われることが有るが、名捕手のいるところに優勝がくることもまた事実だ。特にヤクルトの古田さんや、谷繁さんは評価されることが多い。この2人には野村さんと大矢さんという名捕手の師匠がいることも共通している。
では小林誠司捕手や大城卓三捕手の師匠は誰なのだろうか?
自信を持ってリードを教育できるコーチは誰なのだろうか?
古田さんは知恵を使えば弱者でも勝てるとしている。
巨人は歴史的に圧倒的な戦力で勝ちきってきた。しかし現状の戦力は少なくとも均衡してきている。
そろそろリードの重要さを、巨人という球団が、理解したほうが良いときかもしれない。
監督の現役時代のポジション
原監督は三塁手、高橋由伸前監督は外野手。ふたりともバッテリーのことを現役時代はほぼ関知していないだろう。他球団で成功している監督は投手、捕手、二遊間がほとんどだ。投手の育成を考えた時に、投手出身の頼れるコーチがいなければ難度が上がる。巨人も高卒の3本柱を育成したのは、故・藤田元司監督だ。藤田監督は斎藤雅樹投手をサイドスローに転向させ、桑田真澄投手の脚の上げ方をホーム方向へ矯正した。巨人は堀内監督以後に投手の監督は就任していない。今後も候補はいない。
野球は殆ど投手の出来で決まると解説者は声を揃えるのに、現状の巨人の方針は疑問が残る。
高橋由伸前監督は谷繁さんに、キャッチャーについて教えて欲しいと依頼していた事が、全てを物語っているのではないかと思う。
巨人も色々と、考え直さなければならない時期に来ているのかもしれませんね。