ジャイアンツの浅野翔吾選手が8月昇格後に、35打数14安打の打率.400、OPS1.160と打ちまくっています。開幕直後とは明らかに違う内容で、成長の跡を見せています。まだまだレギュラーを勝ち取ったとは言えませんが、コンディションさえ良ければ、1軍で活躍する実力は身につけたようです。今後連戦が続くことによって疲労などから調子を崩すことも考えられますが、少なくとも2軍で燻らせることは無いと予想されます。
一流選手の証明
フェルナンデス選手の怪我による離脱という一瞬で煌めいてみせたのは、一流の証明と言ってもいいと思います。今のジャイアンツで言えば坂本勇人選手は、二岡智宏選手の怪我による離脱でレギュラーをものにしました。その時と今回の成り行きがダブって見えます。坂本選手は守備力と将来性でレギュラーをとりました。浅野選手は守備力は平均的ですが、打力と走力、特に勝負強さで出場機会を獲得しています。一瞬の機会を逃さないのは、流石にドラフト1位で評価された野手ということになるでしょう。
チャンスが無いは言い訳
よく1軍半の選手を”チャンスが少ない”、”もっと我慢して使えば成長する”などと首脳陣を批判することがありますが、起用に値しない選手を1軍で使い続けることは無いでしょう。今年も開幕後フェルナンデス選手が入るまで、外野手はチャンスが豊富にありました。レギュラーは丸佳浩選手だけという状況の中で、誰一人ポジションを獲得できなかったのは、単に実力不足です。厳しい言い方をすれば努力が足りなかったということになります。これだけ継続的にチャンスが有りながら、活かせなかったのは準備不足としか言いようがありません。
ドラフト1位は別格
坂本選手の場合はドラフト1位で評価されていますので、その時点で起用に値する選手です。同様に浅野選手もドラフト1位ですので、球団としては優先的に起用する評価をしています。今のジャイアンツのレギュラー野手を見ていると、ドラフト1位の起用が際立っています。坂本勇人選手、吉川尚輝選手、岡本和真選手、長野久義選手、小林誠司捕手に浅野翔吾選手と確実に戦力になっているのがわかります。
過去のドラフトを遡ってみても、ほとんど戦力になれなかったのは、1995年の原俊介捕手と、1989年の大森剛選手ぐらいです。ただこの二人共に東海大相模の監督、ジャイアンツの球団幹部といった活躍を引退後にしています。
こうしてみるとジャイアンツのドラフト1位の野手はほぼ間違いなく、成功と言ってもいいと思います。それだけドラフト1位で野手を指名する場合は、飛び抜けた存在であり、球団も覚悟を持って育成をすることになります。
ドラフト2位以下は同列?
逆に言ってしまうと、ドラフト2位以下はほぼ同列の扱いと言って良いのかもしれません。それだけに少ないチャンスをものにできない選手は、捕手以外はあっという間に現役生活が終わってしまうでしょう。
若手と言われる期間もそれほど長くはありません。成長の曲線が見られない場合は、見限られるのも早いでしょう。
ただ、見限る球団の目は、わりと確かなもので、捕手以外は成長が止まる時期が早いので、じっくり成長を待つよりも、次の若手に切り替えるほうが球団も選手も結果が良いと思われます。
時間がない選手たち
昨年のドラフト2位の萩尾匡也選手や今年のドラフト3位の佐々木俊輔選手は、特に苦しい立場に追い込まれていると思います。佐々木選手は大学ー社会人を経験しているので、大きな伸びしろが期待できる選手ではありません。萩尾選手も与えられたチャンスはかなり多かったと思いますが、1軍では対応できない状況が続いています。
楽しむ余裕なんて無い
個人競技の選手がオリンピック等を楽しむというのは理解できます。
しかし野球の場合は格闘技のように、個人対個人の対戦ゲームです。楽しんで自分の実力を出したので、負けてもいいとは言えない種目です。
相手を倒してやるという気持ちがない選手は、余程実力の差がない限り、勝てないと思います。
東京六大学のジレンマ
東京六大学は他のリーグと比べて歴史があるとともに、少し変わったリーグです。まず入れ替え戦がありませんので、明らかにレベルの低いチームが存在してしまいます。未だにDHも使っていないので、打力の低い投手が打席に立ちます。東大の選手に対して早稲田や慶応の選手は、楽しんで対戦できるかもしれません。しかしそのマインドは、プロに入ってからは邪魔にしかならないと思います。
最近のプロ野球では東都大学リーグや地方の大学の選手に比べて、六大学出身の選手の活躍があまり目立ちません。大きな期待を背負って、六大学のスターが入ってきますが、高橋由伸選手の活躍以降は期待通りとはいっていないでしょう。
厳しい練習を強要されなくなった今、選手の自主性が期待されます。
それはそのままプロに入ってからも、あまりマインドが変わることはないのかもしれません。
こういった傾向はプロ球団もとっくに察知していて、各球団の近年のドラフトでその傾向は色濃く出ていると思います。早く自分の立ち位置を自覚できないと、努力不足のまま現役が終わり、大きな後悔を残してしまうかもしれません。
一般社会も厳しさは本質的に同じ
プロ野球は時間が短いので厳しく見えますが、一般社会、とくにサラリーマン社会も本質的には変わりません。レギュラークラスをサラリーマンの社会で目指すのであれば、長い期間をたゆまぬ努力で勝ち抜く必要があります。サラリーマンの組織のトップを目指すとなると、プロ野球でのレギュラーを取るくらいに厳しい戦いが長期にわたって繰り広げられます。お金を稼ぐこと、競争社会で勝つことが厳しいというのは、一般社会も相当に厳しいということです。