松山秀樹選手マスターズ優勝 ~鉄壁のディフェンス~

遂に松山選手がメジャーを取った。実力を認められながらも挑戦すること10回。やっとたどり着いた。

最終日の難しいセッティングで、ほとんどの上位選手がスコアを伸ばせなかった。松山選手もバックナインで苦戦した。

オーガスタでは数々の大逆転劇が起こっている。タイガー・ウッズは別格としても、バレステロス、ミケルソンやファルドなど複数回優勝している選手はいるが、その一方で数多くの強豪が、オーガスタで優勝できないでいる。

グレッグ・ノーマンの悲劇は有名だ。87年にマイズとバレステロスとのプレーオフで破れたノーマンは、96年に最終日6打差の首位でスタートしたが、78を叩いて優勝を逃した。

2011年に2位に4打差をつけてスタートしたマキロイは、なんと80を叩いてしまった。マキロイは自身のキャリアグランドスラムに、マスターズだけが足りない。

他にもアーニー・エルスやデヴィッド・デュバルなどマスターズ優勝にたどり着けなかった強豪は数多い。それだけに最終日に4打差をつけてスタートした松山選手も、1ホールでも気を抜けば、大叩きをしてしまうコースに、最後はヘトヘトだったと思う。

松山選手はPGAの中でも有名なほどの、力強い体躯を利用した距離の出るフェーダーだ。

マスターズのようにグリーンが高速で、点で狙っていけないとウォーターハザードに捕まってしまい大叩きをしてしまうセッティングでは、フェードでなければピンを攻めていけない。

19年に優勝したタイガー・ウッズは徹底的にフェードで攻めていた。ドライバーも飛距離を殺してフェードでフェアウェイを狙った。ショートホールでも他の選手がピンを狙えない中、フェードでピンをデッドに狙うことができた。

松山選手も3日目の15番で他の選手が水を避けて右から安全に狙ったところを、果敢に左からピンをデッドに狙っていった。この鉄壁のディフェンスができれば、オーガスタも攻略できると皆が思ったはずだ。

ところが15番のロングで、鉄壁の筈のディフェンスが崩れてしまう。2オンを狙ったボールはとんでもない勢いで、グリーンをオーバーし池に入ってしまう。ライは良かったのだが、少しだけつま先上がりだったためか、フェードがかからずに逆にドロー回転がかかってしまった。鉄壁と思われたディフェンシブなショットが、一瞬で崩れてしまった瞬間だ。ここでダボやトリを叩いてしまっては、悲劇の主人公の仲間入りになってしまう。その可能性は低くなかったのだ。ここで松山選手は冷静に4打目を乗せに行かずに、グリーンの手前で止めてなんとかボギーで抑えた。このホールで大叩きをしなかったことが、優勝につながったのだと思う。

その後も疲れからか、プレッシャーからか、15番セカンドの嫌なイメージが消えないのか、得意のカットボールが精度を欠き始める。18番までに貯金をすべて吐き出して、1打差の辛勝だった。最後までハラハラ・ドキドキの展開だったため、優勝の瞬間は盛り上がった。

これで壁を超えた。松山選手のパワーフェードなら難関コースを攻略できる。パターさえ入れば、他のメジャーやマスターズの複数回優勝などを常に狙っていける。未だ29歳。これから日本中の人が何年にも渡って、リアルな期待感をもってメジャー大会を楽しむことができるのである。

日本人の期待を一身に背負う松山選手の荷物を軽くする、若手に飛び出してきてほしい。

そのためには点で狙うことができるパワーフェードと、それを可能にする怪我に強い体を手に入れて欲しいのである。

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