ジャイアンツは最初の入札で金丸夢斗投手を4球団競合の抽選で外して、花咲徳栄高校の石塚裕惺選手を指名。ここでも西武ライオンズとの競合の末、見事交渉権を獲得しました。私は個人的に、ドラフトでは野手の指名を優先に考える少数派といえますが、今年の指名は私の個人的な趣向から言えば、満点に近いドラフトだったと思います。
石塚裕惺選手は今年の最高のプロスペクト
明治大学の宗山塁選手が今年のドラフトでは野手ナンバーワンの評価を受けており、実際に5球団の重複指名を受けて、それを証明する形になりました。俊足・巧打・堅守との評価は間違いなく、ショートとしては即戦力と言えるでしょう。どのチームも打てるショートは必要で、競合のリスクをとっても獲得に動いたのは当然のことだと思います。ただし、175cm78Kgとサイズには恵まれていません。ショートで長く活躍するためには、むしろ小柄な方が有利だと思いますので、長打力を求めなければ、10~15年はショートでレギュラーをはれる人材だと考えることはできると思います。
宗山選手とは対照的に、石塚選手は181cmとサイズには恵まれており、ショートとしては大型と言っていいでしょう。高校野球でショートをやっていても、プロに入ると水準に達することができない選手はかなり多いですが、50m6秒2の脚力と遠投100mの肩に恵まれているので期待は持てそうです。
バッティングに関してはまだまだこれからですが、パンチ力は有るとのことなので、5年後に向けて科学的トレーニングを積めれば、伸びしろは十分だと思います。
川相コーチの存在
今年ジャイアンツの堅守を支えた川相コーチが、2軍の野手総合コーチに就任しました。川相コーチは石塚選手にとっては、とても大きな存在になると思います。特にショートの守備については、プロ仕様の守備を鍛えてもらえる絶好の機会だと思います。
ただバッティングについては、昨年のジャイアンツの2軍の選手は誰も伸びてこなかったので、少し心配ではあります。まずは体つくりに注力して、守りを強化して1軍に帯同できるようになれば、バッティングは後から伸ばすことも可能でしょう。2軍の打席に多く立つことも重要ですが、早く1軍の投手のレベルを感じることも大切で、そのためには守備力を磨いて出場機会を得てほしいと思います。
金丸夢斗投手について
ローテーション投手としての素養は十分にあるようですが、1年間ローテーションを守ることができるかが問題になるでしょう。177cmとサイズは大きくありませんし、腰の故障歴を抱えていることなどから、体力的に良いコンディションを保つことが重要だと思います。最近のアマチュアはあまり球数を投げませんので、プロの世界で故障しないことが非常に重要になります。楽天に入団したので、ローテーションに入ることは可能だと思いますが、焦りは禁物だと思います。たとえ好投が続いても、1週間以上の間隔を開けて、暫くは使っていったほうが良いのではと予想します。
野手優先のジャイアンツ
クライマックスシリーズで野手の弱さが露呈したジャイアンツが、1巡から3巡まで野手を指名しました。水野スカウト部長のコメントに有るように、2巡で残っている即戦力投手と育成途中のジャイアンツの投手を比べた時に、野手を優先したほうが良いとの結論に至ったという考え方は、極めて合理的だと思います。
更に素材型の高校生投手を育成も含めて多く指名したところに、現在のジャイアンツの投手育成力に自信があることの証左だとも取ることができます。
現在のプロ野球は投高打低であり、各チームの投手育成能力が上がっていることには間違いないので、素材型を多く指名したのは好感が持てます。また2巡でスピードスターを、3巡でスラッガーを指名し、両選手ともに内野手ができるというところに、非常に戦略性が感じられます。足と肩に問題がなければ、外野手へのコンバートも十分に適応できるはずで、打力さえ上がってくれば来シーズンのレギュラー取りもあり得る指名だと思います。
野手育成ノウハウの積み上げが必要
投手の育成能力にはある程度の目処がついたジャイアンツですが、野手の指導のうちバッティングの指導に問題が残っているようです。1軍では阿部監督が自ら指導していたようですが、それでは行き届きません。2軍のバッティングコーチも結果が残せなかったコーチが引き続き担当するようですが、今年はどういったプランが有るのか非常に興味があります。ジャイアンツの野手はストレートを仕留められない打者が多く、振る力がソフトバンクなどと比べると見劣りするように感じます。日本シリーズでホークスに8連敗した時に、甲斐捕手が”ジャイアンツの打者はストレートに弱い”とコメントしていると言われており、その傾向がなくなっていないように感じられます。
このあたり若手にどれだけ練習させることができるかが、育成の鍵になるのではないでしょうか?若手選手のバットを振る量が少なければ、戦力外になるのは今年よくわかっているはずです。怪我を恐れてバットが振れないならば、将来はないでしょう。
厳しい世界であり、それは今年の解雇からも明白です。