一般社会では大企業になれば新入社員の育成プログラムは、数年先から管理職になるまで作成されています。その中で有望な社員には、人事部が特別にキャリアパスなるものを考えた中で、将来の幹部社員になるための人事ローテーションまで考えて育成プログラムを作成しています。会社人生が約30年とすると、最初の数年で何処まで出世できる可能性があるか、実際は見えてきてしまうということです。
入社後に営業で素晴らしい成績を挙げて、社長にまで上り詰めるサクセスストーリーが語られることがありますが、販売会社ならありえるかもしれませんが、メーカーや金融機関ではあまりないケースと言えるでしょう。特に昨今の金融機関は販売ノルマなるものが以前よりは苛烈ではなく、AIの普及などにより、販売ノウハウは定型化してきています。対面での販売や取引先との人間関係は、以前ほど重視されなくなり、接待などはどんどん縮小されて、上場企業の中には接待を受けることを禁じており、食事をともにする時は割り勘でないと応じてくれない取引先も増えています。
ちょっと話がそれましたが、入社後の育成プログラムはかなり先まで設定されているのが一般社会では常識ですが、プロ野球界では育成プログラムは定型のものはないようで、毎年毎年その場に応じて作成されているようです。
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2021年にジャイアンツは、コーチ陣が大きく変わりました。
その変化の中で2021年の高卒投手には、一定の育成指針が出来たようです。それまでのジャイアンツの新人投手は、入団後に故障が頻発し、手術のために育成が遅れた投手が目立ちました。特に2019年の1位堀田賢慎投手、2位太田龍投手、4位の井上温斗投手は入団直後、あるいは翌年に故障が発覚して、支配下で指名した投手がすべて手術の適用になるという有様でした。こうした状況下でようやく、2021年の高卒投手に対しては、一定期間体つくりに専念させる方針が確立されました。
逆に言えば、そんな簡単な指針でさえ現場任せ、コーチ任せになっていたということになります。
プログラムのメリットとデメリット
一定のプログラムがある場合、コーチの判断や本人の申告に拘わらず、育成メニューが決まっていくので、不測の事故を回避できる可能性が高まります。しかし、育成プロセスに柔軟性がなくなるため、選手に合わせたプログラムが作成できなくなる可能性もあります。
今までは選手の数も少なく、個別のメニューで育成した方が効率的だった可能性が高いでしょう。
育成プログラムが必要な理由
3軍制のジャイアンツ
選手がコーチに寄り添って、個別プログラムを作成することは大切ではあると思いますが、3軍制を引き選手の数が増えた今のジャイアンツでは、育成プログラムを個別に作ることはなかなか難しくなってきていると思います。3軍制ともなれば、育成段階によってコーチが変わることはとても多くなるでしょう。シーズン途中での入れ替えがあれば、一定したコーチングを受けられる可能性は低くなります。
若いコーチが多いジャイアンツ
ジャイアンツのコーチ人を見ると、現役引退から即コーチとなったケースが多く見られます。特にFAで移籍してきた選手が現役引退と同時にコーチになるケースが多く、コーチとしての実績がないまま2軍や3軍の選手を預かることになります。”名選手が名コーチにはあらず”は、ある意味常識で、そんな経験の浅いコーチに、新人選手をフリーハンドで預けるのは、無理があると言わざるを得ません。新人コーチがドラフト1位の選手を潰してしまったとなれば責任問題となり、コーチの受ける重圧も大きいと思います。
横川凱投手の育成
今年フォーム改造によって球速が増したと言われる横川投手ですが、昨シーズンの140Kmに届かない球速が、年を明けたら150Kmを計測したと報道されています。急激に期待値が高まっている横川投手です。しかしそれまでの投手コーチは、どういう指導をしていたのでしょうか。年を越しただけで身体的能力が急激に上がる筈はなく、コーチが代わったことによる変化が大きいということが推測できます。投手の重要な指標の一つである球速に対して、このような管理の仕方は育成プログラムが不十分であることの現れではないでしょうか。
たとえば、球速に関しては入団3年目までに最低145Kmまでを目指すなどの一定の目標がない組織は、一般社会では考えられません。今は回転数や球速など様々なデータをとれるので、一定の成果を数値化して選手とコーチに目標を共有化することが、必要なのではないでしょうか。
また、すべてをコーチに委ねていてはコーチの責任が重くなり、パワハラなどの問題などもコーチには足枷となる昨今では、一定のプログラムによる指標があれば、コーチの指導もやりやすくなると思います。
坂本勇人選手の不調
打者においてもスイングスピードや打球速度など、今は様々なデータが取れるのに、育成プログラムに取り込まれていないのは不十分なのではないかと思います。
昨シーズン不調の坂本勇人選手のデータが落ちていたことが、秋のキャンプで判明したらしいですが、シーズン中からデータを取るなどの管理がされていなかった事は、とても残念です。
データやプログラムなどに縛られていることを嫌がる雰囲気があるのであれば、科学の発展についていけず、MLBや日本の他球団に差をつけられることにもなりかねません。
フィジカルの管理と秋広優人選手の成長
他球団では選手のフィジカルについてもかなりしっかり管理して、育成プログラムを作っています。しかしジャイアンツは報道を見る限り、選手任せになっているようです。今年大幅な増量で話題になっている秋広選手ですが、体重管理が球団でされているようには聞こえてきません。本来であれば、秋広選手の体格やポジションに合わせてフィジカル面の育成プログラムを作成し、目標を決めるべきだと思います。
岡本和真選手の適正体重
岡本和真選手が今年は昨年の調整の失敗から大幅に減量したようですが、岡本選手の適正体重は科学的に計算できるはずであり、球団が適正体重による管理をしていないところも問題があると思います。若い4番バッターの岡本選手にすべてを任せていたのであれば、球団の怠慢が優勝を逃した大きな原因であったということもできると思います。
大量解雇の外国人
外国人をウォーカー選手以外総入れ替えしたジャイアンツですが、昨年の投手陣は重量オーバー気味の選手が多い印象でした。これも球団の管理が行き届いていないことの現れだと思います。今年の新外国人をみると殆の選手がスリムであり、昨年の失敗が活かされているようです。もしかしたら体重オーバーにペナルティがつく契約になっているかもしれません。
首脳陣の交代
原監督が長期政権を築いていますが、本来であればコーチは数年で大きく変わります。その度に育成プログラムの基本部分が大きく変わるようでは、選手は戸惑います。また、スカウト部門も育成方針の基本部分が大きく変わるようでは、アマチュアとの約束事も守れず、スカウト活動に支障を来すはずです。起きている現象を見ていると、今の巨人に十分な育成プログラムがあるとは思えません。選手個別のプログラムは当然作成の必要がありますが、基本部分の作成を急ぐ必要があると思います。
中堅選手やベテラン選手にもキャリアパスの管理を
坂本勇人選手のコンバートが最近良く話題にされていますが、球団幹部になるような選手には、キャリアパスの管理が必要になると思います。ジャイアンツの組織は年々大きくなっているのですから、いつまでも原監督がすべてを取り仕切るような、属人的な管理方法は十分に機能しません。坂本選手のコンバートも属人的に決める部分と、組織的に管理する部分が必要だと思います。
貴重な人材の阿部慎之助ヘッドコーチと高橋由伸さん
また、阿部慎之助ヘッドコーチの処遇については、原監督の一存で決まるような雰囲気がありますが、阿部コーチはジャイアンツの貴重な幹部候補生です。ヘッドコーチあたりで終わる人材ではないので、球団挙げて幹部へと育てる計画が必要だと思います。球団主導で引退させたのですから、そのあたりのケアは必要だと思います。
高橋由伸さんももう一人の球団幹部候補生で、本当に貴重な人材です。現場のために引退、監督就任、辞任と努力をされてきましたが、あまり大切に扱われたようには見えませんでした。今は系列のスポーツメディアに重用されていますが、再登板の際はフロントを挙げて応援することはもちろん、読売グループの総力でバックアップしてほしいと思います。