野球は確率のゲーム 負けるべくして負けているジャイアンツ

野球はデータを重視し、確率が勝敗を左右するゲームだという見方があります。最近ではビッグデータなどを利用して、極端なシフトを取るなどデータを有効に利用するチームが日米共に増えてきています。

あと1本が出ないという首脳陣

チャンスであと一本ヒットが出ないことについて、“あと1本出れば”とコメントする首脳陣がいますが、それは確率を見ていないからだと思います。

良く打率が.250の選手と打率.300の選手を比べて、年間400打数有るとしたら打率.250で100安打、打率.300では120安打で年間20本しか変わらないから、チャンスで打ちさえすればいいという発言をする解説者がいますが、私はそうは思いません。

たとえばノーアウト1塁の時に、打率.250の選手が3人続いたら、ヒットが1本出る確率は75%しかありません。しかし打率.300の選手が3人続いたら、ヒットが1本出る確率は90%あります。ノーアウト1塁のチャンスが1試合に3回あれば、75%✕3=225%と90%✕3=270%で期待値はそれぞれ2点と3点に近くなります。年間143試合で考えたら得点力は大きな差になります。それほど3割バッターには価値があります。そして3割バッターが続けて並ぶオーダーにこそ、価値が出てくるのです。

3アウトチェンジの罠

さらにジャイアンツの場合は俊足の選手が少なく、1安打で一つしか進塁できない場合が多くなります。そうなるとノーアウト1塁で得点するためには、3安打が必要になります。3人で75%しか1安打が出る確率がないのに、2本目が出る頃には3アウトチェンジになってしまいます。このあたりが野球のよく出来たところで、ただ打つだけでは得点は難しいことが解ります。そのため送りバントをしたり、エンドランをかけたり、盗塁をするなどして、1本のヒットで1点を取る作戦を取ることになります。

長打力よりも脚力

脚力のある選手や長打力の有る選手に価値があるのは、1本のヒットで2つ3つと進塁できるからです。特に脚力は常に威力を発揮できるので、長打力よりも確実に進塁に貢献できることになります。長打力のある選手は塁上で動きが悪い場合が多く、ただ打つだけの作戦になりかねません。それほど脚力は重要で、少なくとも渋滞を招くような脚力の選手は、上位打線には絶対に置くことが出来ません。

失点を招く原因

連打で得点を重ねることは難しく、ベンチはいろいろな作戦を立てて進塁しようとしますが、守備側のミスに付け込んで得点を重ねることがあります。

最悪のフォアボール

一流のバッターでも3割しかヒットが出ないのに、フォアボールは相手チームをとても助けることになります。今年ジャイアンツのフォアボールが多いことが指摘されていますが、確率論から言ってもフォアボールを挟めば失点の確率は無条件で跳ね上がることになります。無条件で1つ進塁させることは、どれほど相手チームを楽にさせることかを、認識しなければなりません。

記録に残るエラーと記録に残らないエラー

これほど1つ進塁することが野球というゲームでは大切なことですが、エラーも失点の確率を跳ね上がらせます。打率.250のバッターでも4回打てば、1本はヒットが出る確率となります。エラーが絡めば失点を防ぐことが極めて難しいことがわかります。

また、外野手の弱肩や緩慢な守備によって進塁を1つ多く与えてしまえば、それだけで失点の確率が跳ね上がります。

守備の悪い選手について、打撃で取り返すことができればなどと言うことがありますが、個人的には打率.300本塁打30本でも、守備力の程度にもよりますが、損得が合わないのではないかと思います。

今の巨人軍の戦略

チーム打率.242でありながら、”あと1本“なんて期待するほうが難しいと思います。残念ながら今のジャイアンツの打線は、序盤から大量点を狙える打線ではなく、機動力を駆使して1点を積み上げていかなければ、長いシーズンでは負けが増えていくことになる実力ではないでしょうか。少ない得点を守ることが必要となりますので、無駄な失点はできません。エラーとフォアボールは致命傷となることを、十分に考慮してメンバーを選ぶ必要があると思います。野球は確率のスポーツです。短期決戦であれば、集中打で勝つことも有るでしょう。しかし長いペナントレースでは、結果は確率に集約されていきます。今の打線では打ち勝つ野球は諦めて、戦略を建て直さなければ結果は変わらないと思います。

チーム打率とチーム防御率

これほどチーム力を端的に表した数字は、他にはないのではと思います。今の順位はチーム力相応ではないでしょうか。かつてのように3割バッターを並べる事ができないのであれば、戦略も当然変更が必要になります。今のFA市場と日米の関係性が続くのであれば、なかなかかつてのような重量打線で押し切る打線を組むことは、難しいのではないでしょうか。

“あと1本が出ない”ではなくて、あと1本出なくても得点できる攻撃を、目指す必要があると思います。そのためには、選手選びから考え直す必要があるでしょう。巨人が強かった時代の野球は何通りかあると思いますが、V9時代のように役割をきっちりと振り分けて打線を組まなければ、3割バッター不在の中で、安定して勝利を積み重ねることは難しい状況ではないでしょうか。2番最強打線なんて、強豪チームしか出来ないでしょう。

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