積極打法と待球戦術 プロ野球ではどちらが有利か

プロ野球を見ていると、簡単に初球を凡打してしまう選手を見てがっかりします。特にイニングの先頭と次の打者が初球に手を出して2球でツーアウトを献上してしまうと、心底失望します。しかし一方で積極的に手を出さなければ、簡単にツーストライクまで追い込まれてしまいます。追い込まれた後の打率が悪くなることは、どの打者でも例外がなく、積極打法が推奨されるデータの裏付けになります。どちらが有利になるのでしょうか。

積極打法のメリットは投手へのプレッシャー

好球必打が実行されなければ、投手は簡単にストライクを取りに行けます。そうなれば投手はカウント有利に持ち込むことができ、被打率が下がることはデータが証明しています。打ってこないと投手が解ってしまえば、投手には脅威がなくなり楽なピッチングを展開することができます。つまり草野球でストライクがかなりの確率で入らない場合を除けば、積極打法は必ず必要になる姿勢です。プロ野球においては、積極打法が基本戦略と言って良いのではないでしょうか。しかし積極打法を実行するためには、プロ野球選手として最低限必要なスキルがあります。

積極打法に必要なスキル

選球眼が必要

何でもかんでも打ちに行けば良いわけでは有りません。積極的に打ちに行けば、投手はボール球を振らせにかかります。ワンバウンドのボール球に手を出してしまえば、殆どヒットの確率はありません。ボール球を見極められる選球眼は、必ず必要となります。

スイングスピードが必要

選球眼をよくするためにはスイングスピードが必要です。ボール球に手を出さないためにはボールを引き付ける事が重要で、ボールを引き付けるためにはポイントを近くするためのスイングスピードが重要になるのです。

狙い玉を絞る能力

好球必打には配球の読みが必要です。天才打者でもない限りはストレートを待っていながら変化球を捉えることは難しくなります。一部の天才打者はストレートを常に待ちながら、変化球に対応するようですが、逆にいえばそういう打者は甘い球を待ち、長打を狙うことが出来る稀有な存在です。普通の打者は積極的にデータを研究し、配球を読んで狙い玉を絞ることが必要になります。

打ち損じない技術

折角狙い玉を絞りその読みがあたってスイングしても、仕留めることができずに空振りやファールにしてしまっては、追い込まれてしまいます。スイングすることによってタイミングを合わせることが出来るようになるかもしれませんが、カウントは稼がれてしまいます。読みが当たる確率もそれほど高くなければ、一発で仕留めることは非常に大切になります。

積極打法が特に必要な場面

本塁打を期待できる長距離打者の場合

長距離打者の場合は、若いカウントで狙い球を絞り自分のスイングをすることで、ホームランが望めます。長打を怖がる投手は、長打力のある打者に対しては、四球を出す傾向に有り、出塁率も上がります。また、長打力のある打者は脚力が期待できない選手が多く、四球で出塁させてもホームに返ってくる確率は低くなり、長打が要求されます。

決め球がある投手の場合

追い込まれたら決め球があるために、極端に攻略が難しくなる投手がいます。特にクローザーを相手にした場合、消極的に打席に立てば、コントロールが極端に悪い投手以外はノーチャンスになってしまいます。

待球戦術が必要となる場合

基本は積極打法が必要ではありますが、時には待球戦術が有効となる場合があります。

先発投手のスタミナが無い場合

相手投手のスタミナが極端に無いことがわかっていれば、球数を投げさせることが有効な場合があります。しかし追い込まれても粘ることが出来る投手にのみ有効で、簡単に討ち取られてしまっては、本末転倒な戦法になってしまいます。

長打が期待でき無い打者で打率が低く脚力がある場合

四球も単打も結果は同じです、脚力のある打者の場合は出塁すること自体に価値が有り、投手も四球を嫌がります。フォアボールで出すぐらいならば真ん中に投げてくる確率は高く、打ち損じを期待して真ん中に投げてくる確率は高いと言えるでしょう。しかし打率が低い場合はそれでもフォアボールを狙うほうが、確率が高い場合もあるのではないでしょうか。

勝ちパターンの投手を引きずり出したい場合

3連戦の頭や、短期決戦の場合、救援陣を疲れさせることは重要です。簡単に先発にイニングを稼がせるよりも、救援陣を引きずり出して球数も投げさせることができれば、次戦以降にいい影響を与えることができます。

天才長距離打者の待球戦術

松井秀喜さんはじっくり甘い球を待つことが出来る強打者でした。追い込まれても自分のスイングが出来る一部の天才打者は、本塁打を打てる球を待つ、高度な待球打法と言えるかもしれません。この域まで達したことができた打者は本当に少なく、代表的なのは王貞治さんと松井秀喜さんでしょう。二人に共通しているのは四球での出塁がとても多く、NPBでの通算打率が3割を超えています。王さんは868本塁打を記録しており、松井さんも日米通算で507本塁打を放っています。ここまでの領域を見ていたファンが、同じ領域を今の打者に求めるのは、今の現役打者にとっては厳しい要求ではありますが、目指してほしい領域であることは間違いありません。

プロ野球では積極打法が基本ですが、一定のケースでは待球が必要になります。積極打法に必要条件が揃っていない未熟な打者にも関わらず、積極打法に固執してしまえば、ファンの目から見ても、評価を得られることはないでしょう。

タイトルとURLをコピーしました