育成の巨人は1年で終わりか 球団の本気度が問われる今年のオフ

レギュラーシーズンがBクラスに終わり、CS進出を逃したジャイアンツが秋季練習を行っています。大量に抱えた育成選手などが必死に汗を流していますが、彼らにとってあまり有り難くない情報が出てきています。原監督が今年のオフは資金もあるので、潤沢な資金を使って強化をするとコメントしているのです。昨年オフに”育成”を掲げてFAを封印したジャイアンツですが、その封印は1年で解けてしまうようです。

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育成は1年で出来るはずがない

”育成”を掲げながら、成績不振を理由に1年で方向を変えるのは、あまりにも早いのではないかと個人的には思います。選手の育成は1年で出来るものではないことは、素人でもわかることです。その上、育成は首脳陣や選手だけの問題ではなく、球団の組織そのものの問題でも有ります。”育成”を掲げる前の球団の体勢が、どの様にこの一年間で強化されたか、細かくはわかりませんが、その体制強化がたとえ1年で完了したとしても、その成果が出るのは少なくとも3年後でしょう。今年1年FAを封印したからといって、すぐに解禁するのであれば、あまりにも辛抱が足らないと言わざるを得ません。

選手にもある意味裏切り行為

昨年と今年ジャイアンツに入団した選手の中には、ジャイアンツが”育成”に注力することを念頭に置いて、入団した選手は少なくないでしょう。選手本人やご両親、アマチュア球界の人たちにとって、ジャイアンツの掲げた”育成”の二文字を頼りにしていた人も中にはいると思います。特にただでさえチャンスの少ない育成選手にとっては、入団時の気持ちとは大きく違ってしまうのではないでしょうか。

8人しかいない野手のレギュラーで、二人のFA選手を取ることになれば、大きな環境の変化です。こんなことを続ければ、アマチュア球界からの信用はなくなり、今後のスカウト活動にも大きく影響するのではないかと、危惧します。ある程度のスパンで結果を見て判断するなら理解できますが、たった1年での方向転換は、とても問題があると思います。特に選手の育成に少なくとも3〜5年がかかるプロ野球で、この短いタイミングでの方向転換は、早すぎるのではないでしょうか。

全権監督の限界

普通、球団フロントが”育成”に舵を切ったのならば、現場はその方針で戦わなければなりません。しかし、ジャイアンツの場合は本来中間管理職の原監督が、全権監督であると言われており、GM機能なども兼務しているように見えます。現場の原監督に長期目線で戦えというのは、とても無理がある話です。現場が即戦力を欲しがるのは当然のことです。GMと監督の最終目標は球団強化ではあっても、その時間軸に違いが出ます。当然総論では意見が一致しても、各論では利益相反に近いものが生じることになります。

利益相反が起こる案件に対して、責任者が同一人物になることは組織には許されません。こんなことは一般社会では当たり前のことで、組織の健全な運営がなされない典型的な組織の例です。しかし、今のジャイアンツはそういった組織の整理ができていないので、短期間での方針転換などが起こってしまうのではないでしょうか。

矛盾と責任に苦しむ原監督

育成と言いながら金銭による大型補強に走ってしまう現状は、そのまま原監督の負担となってしまいます。今年ドラフト1位で浅野翔吾選手を獲得しましたが、彼も即戦力というよりは、育成期間が必要な選手でしょう。更に2位で同じ外野手の大学生、萩尾匡也選手も指名しています。育成を掲げるのであれば、この二人を指名したことによる当面の外野手の強化は、十分ではないでしょうか。しかし、2軍や育成には将来のレギュラー取りを目指している選手は、頭数は十分にいます。この秋季練習で頭角を現している、保科選手や秋広選手は、十分に一軍での実戦のチャンスをもらうことが出来るのでしょうか?

競争原理を働かせる事は、組織強化にとっては必要なことですが、過度な競争は選手を潰してしまいます。打てて3割の打者にとっては、少なすぎるチャンスは余計なプレッシャーにもなるでしょう。実戦での機会があまりにも少なければ、優先的にドラフト上位の選手を育てることも、無理が出てくると思います。

そのあたりを現役時代に経験したことがない原監督に解ってもらえずに、苦労するのはコーチや選手でしょう。そして組織が上手く回らなければ、結局は原監督の責任問題になります。第3次政権でコーチとして名を上げた人材がいないことについても、責任をとれるのはGMをも兼任している原監督以外にはいないのです。

全権監督は短期的に見れば、短期目線で判断がブレないので、判断が早くなり、組織内の軋轢もなくなります。しかし、長期的目線は薄れてしまうのは間違い有りません。原監督は将来性を買ったとして、浅野翔吾選手の指名に踏み切りましたが、果たして長期的目線で育成する胆力が原監督にあるのでしょうか。

GMの本来業務を全うできない現実

伸び悩む中堅選手に対して非情な決断を、GMはしなければなりません。しかし、ある程度の時間をともにしてきた中堅野手を、原監督は整理できているのでしょうか。

松田選手や内川選手に代表される実績のあるベテランを、ソフトバンクは上手く整理しています。しかし、原監督が一緒に苦労している中堅選手やベテラン選手に、非情になりきれるとはどうしても思えません。このあたりの組織の滞留も、若手の育成には悪影響があると思います。

衰えの見える坂本勇人選手に対しても、非情な判断ができない原監督は、役目を果たせているのでしょうか。ゲームの指揮だけが責任の範囲でいたほうが、原監督の監督としての能力が活かせるのではないでしょうか。原監督は現役時代から今まで、それ程多くの種類の現場を経験していないのです。本当に経験したと言えるのは、プロ野球ではジャイアンツのベンチの中だけなのです。監督としては疑いようのない能力が、様々なことを兼務することによって消されてしまっていると思わざるをえない、最近の成績です。

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